2021年02月08日

70代の恋愛事情。映画『また、あなたとブッククラブで』

70代女性たちの華やかな恋愛模様と、それを演じるアカデミー賞・ゴールデングローブ賞受賞の名女優たちによる共演が話題の映画『また、あなたとブッククラブで』。40代以降の美しい生き方を探る「Beautiful 40’s」編集部としてはぜひチェックしたい! ということで、50代代表・池田美樹と、60代代表・干場弓子のふたりが、映画鑑賞。感想を語り合いました。

 

●映画のあらすじ

旧知の女ともだち4人による「ブッククラブ」。
そこで出会った1冊の本が、彼女たちの人生の第二章に
輝きをもたらす――。

40年連れ添った夫を亡くしたダイアン(ダイアン・キートン)。恋愛感情なしでの複数の男性たちとの関係を楽しんでいるビビアン(ジェーン・フォンダ)。未だに何十年も前の離婚に苦しんでいるシャロン(キャンディス・バーゲン)。35年を経た結婚生活の危機に直面しているキャロル(メアリー・スティーンバージェン)。

長年の友人である4人は、それぞれのライフキャリアを築き、それぞれ悩みを抱えながらも、共通の本を一緒に読みこむ「ブッククラブ(読書会)」を定期的に開催して、交流を続けていた。ある時、お題本に選ばれたのは話題の官能小説「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」。彼女たちはそのスキャンダラスかつ刺激的な1冊にたちまち感化され、悩ましい日常を忘れて、恋にロマンスに気持ちも行動も大胆になっていく。そして、代わり映えしなかった日常に大きな変化が生まれ始める。

 

70代、80代の美しい男女が
たくさん出てくる「夢物語」

美樹: さて今日は、弓子さんと一緒に映画『また、あなたとブッククラブで』を観てきました。私、実はすごく楽しみにしていたんです!

弓子: ジェーン・フォンダは綺麗だったけど……、本当に綺麗だけど……。あっ、これ余計なこと言っちゃいけないよね?

美樹: いいですよ。遠慮なく(笑)

弓子: さすがに歩き方がちょっと老人っぽくなったなあ。70代ぐらいの役どころだったけど、実際は84歳でしょ?

美樹: 84歳! そうかあ。

弓子: とはいえ、すっごく綺麗だよね、美人よね。あと74歳のダイアン・キートン、美しいし、若々しい感じがしたなあ。キャンディス・バーゲンは、すっかり太ってしまってがっかり。でも、綺麗よね。

美樹: ですねー! いわゆる、70代女性たちの群像劇なんですけど、出てくる女性たちが本当に綺麗でワクワクしました。

弓子: 共感できた登場人物はいた?

美樹: 映画に「今まで仕事をがっちりやってきた」「ガシガシ独身でやってきて、成功をつかんだ」みたいなベテラン女性が何人も出てくるんですけど、私はやっぱりその人たちに共感しましたね。

弓子: ああ、なるほどね。

美樹: あと個人的には、あんなすごいお金持ちのパイロットとか、成功したラジオプロデューサーの男性が、独身でその辺に転がってるんだったら、心底うらやましいなと思います。

弓子: 今まで何十回も飛行機に乗ったけど、あんな素敵なパイロットが、オフで客席の隣に偶然座るとか、ありえないっての! しかも、その人と何かが起こるなんて、そんなのは皆無ですよ! 

美樹: いやいや。そういう意味で、この映画は夢物語だとは思いました(笑)。

弓子:  それに、そういう人ってふつう、ビジネスかファーストでしょ? パーテーションがついてるから、会話どころか顔もよく見えない! ……って、声がかからないの、私だけ?

美樹: 弓子さん、本気で憤ってますね……。

弓子: あんな「いい男」は、日本にいません(笑)。同年代で、好意があるとかないとかの以前に、独身もしくはフリーで、あんないい男に出会えることはなーい! まあ、夢物語は映画だから当たり前なんだけど。

美樹: そう、ダンディで、お金持ちで、スタイル良くて、社会的地位もあるような素敵なシニア男性が、映画にたくさん出てくるんですよね。でも他にも、体型が崩れていかにもおじさんぽいとか、ちょっと情けない感じの人とか、いろーんなタイプの男性が出てきます。

弓子: 映画が伝えているメッセージには、すごく共感しましたね。70歳ぐらいの年齢になっても、まだもう一度、最期まで、自分のために生きる。「愛を諦めない、人生を諦めない。」「女を、男を諦めない」っていうメッセージ。これには、ものすごく共感するな。

美樹: そこが、映画のメインテーマですね。

弓子: あとは、70歳ぐらいになって、主人公たちが「これが、人生最後のチャンスだ」とわかっているのに、それでもやっぱり、失敗を恐れるところ。ここにも共感したなあ。

美樹: ああ、そうなんですよね。経験豊富で、もう失うものはなさそうなのに、それでもやっぱり失敗を恐れて、行動を躊躇(ちゅうちょ)するんです。愛らしい感じがしました。

弓子: その迷う感じも、すごくよく分かるのよ。

 

後期高齢者の性愛を描いた
映画や小説が次々と誕生している!

弓子: こういう恋愛ベースの映画を、60〜70代の層に向けて作れるっていうことは、需要があるのか、あるいは需要をつくり出そうとしてるのか、どっちなんだろう? と思いながら観ていました。

美樹: さすが、マーケティング的な視点ですね。

弓子: 他にもいくつか動きは感じていて。例えば、2000年前後の10年間、テレビで大ブームとなった『セックス・アンド・ザ・シティ』の原作者による小説『25年後のセックス・アンド・ザ・シティ』が2019年に出て、日本でも去年の夏、翻訳版が出た。

美樹: あ、ジェーン・スーさんが序文と推薦文を書いてた本ですね!

弓子: まあ、実は話はあんまり面白くはなかったんだけれど(笑)。ちょうど50歳になった人たちの話で、その層と同じだなあと。

美樹: 『セックス・アンド・ザ・シティ』は、50歳になった彼女たちのその後が、テレビドラマ化されることも発表されてましたよね。

弓子: そうそう! 他に、日本だと、岸惠子さんの小説『わりなき恋』。設定は、69歳の女性が、飛行機のファーストクラスで59歳の男性と出会うのね。あっ、これも出会いは飛行機だ。

美樹: やっぱり、ある日そういうことが、起きるのが、人生かもしれないですよ。2021年は起きるかもしれない。

弓子: 『わりなき恋』は、作者の岸惠子さんが、ご自身の経験をもとに、後期高齢者の恋愛を描いた物語。69歳と59歳で、彼の方には病弱な奥さんがいるという設定の、まあ不倫なんだけど。もちろんセックスを伴うわけよ。発売後1週間くらいであっという間に10万部を超えて、大ヒットになったんです。

美樹: すごい。それは当時、衝撃だったってことですよね?

弓子: 今も衝撃だと思うよ。ほかにそんな本は、なかなかないもの。

美樹: 確かに。

弓子: そのとき、釣られてリバイバル風に話題になったのが、『マディソン郡の橋』の映画版。クリント・イーストウッドが監督・主演した1995年の作品ね。これも、中年の恋愛小説で、こちらは女性のほうに旦那と子どもがいる不倫の話なんだけれど、男の純愛がすごくて、涙、涙で話題になりました。

美樹: 大ブームになりましたね。

 

  

左から
小説『25年後のセックス・アンド・ザ・シティ』著/キャンディス・ブシュネル(大和書房刊)
小説『わりなき恋』著/岸惠子(幻冬舎刊)
映画『マディソン郡の橋』監督・主演/クリント・イーストウッド、共演/メリル・ストリープ

 

老齢年金を受給しながら、
恋愛にも励んでしまう時代が来た?

弓子: こうしてみると、10年くらい前までは、60歳どころか、50歳くらいで「もう、そういうのはおしまい」みたいな。「あとは余生」みたいな、そういう感じがあったと思うのね。それが近年、60歳、70歳とか、ようするに年金の受給年齢が高まるにしたがって……。

美樹: 年金を受給しながら、恋愛にも励む時代が来たと(笑)。

弓子: そうなのよ! 実際、今、実感年齢は実年齢の7掛け、という説があるくらい、身体的にも精神的にも昔よりずっと若い。だから今は、実は恋愛願望も、まだまだあるぞと。

美樹:  感覚が若々しくなっているということ?

弓子: 映画や小説になるっていうのは、ある意味「みんなの願望」でしょ。また同時に、すでに先端的な層では水面下で起きている「現実」なんだと思うよ。

美樹: ああそうかも。映画だから楽しめる、でもちょっとありえる、というあたり。

弓子: そう。今も昔も、やってる人はやっている。でもそれが、ごく一部の人の話だったのが、最近は表面に出てきたというか、みんなが享受する時代になるのかな、とは感じます。

美樹: 確かに、昭和の時代には相当なタブーだったような話ですよね。

弓子: 今回の『また、あなたとブッククラブで』の映画の入り状況とか、周囲の状況を見た感じでは、日本では、願望はあるだろうけれど、一般の人がそういうことをおおっぴらに言う風潮は、まだ少ないのかなという印象。

美樹: それはアメリカでも同じ? 映画の中に、累計1億部を超える世界的ヒットとなった女性向けソフトポルノ小説『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』に対して、主人公の70代女性たちが「いやだ、私こんな本読みたくないわ。もっと上品な本の方が」って、言ってましたよね。

弓子: でも、結局その本に感化されて、オーバーセブンティーズ達が、いきなり恋愛モードを蘇らせるのよね。

美樹: ちなみに『フィフティー〜』は実在の小説で、日本語翻訳版も出ていますので、その気になりたい方はぜひ!

弓子:  日本ではまだ、60過ぎ向けには、いやひょっとしたら50過ぎ向けでも、老成した、熟成した、穏やかな悟りの境地に導くような作品が主流。みんながみんな、そんな本を読みたいって本当に思っているのかしら? 実際にはそういうのが売れているところを見ると、私がずれているのかな。

美樹: 来そうな感じ、ありますよねえ。

弓子: 私の感覚って、10年早いと思っているので、10年後は全く違うかも! 美樹さんが60代になったとき、刺激的な作品はだいぶ増えていると思うな。それに期待したいな!

小説『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』著/E L ジェイムズ、訳/池田真紀子(早川書房刊)

ひとり、自分の人生を歩むか
やっぱりそこに恋愛が必要か

美樹: 映画『また、あなたとブッククラブで』の話題に戻るんですけど。私はこの映画を、「恋愛」に中心を置いては観なかったんですよ。

弓子: へえー。詳しく聞かせて。

美樹: 今までの映画だと、「全員、恋が実ってよかったね」と、恋愛のハッピーエンドが結末になる気がするんですけど。この映画は、それぞれのヒロインに、それぞれ着地点があったところが、すごく面白いなと思いました。愛を叶える人もいれば、仕事のこれからを決意し直す人もいるし。夫のところに戻る人もいるし。

弓子: 確かに、確かに。

美樹: 「恋愛」っていう、わかりやすいテーマを出しながらも、実は「女性は、それぞれの道を選んでいいんだよ」っていうのが映画のメッセージなのかなと感じたんです。男はもう別にね、いても、いなくてもよかったんですよ、たぶん。

弓子: おっしゃるとおりで、私も、これが「恋愛がすべて」の、「恋愛映画」とは思わない。自分の自立した人生をそれぞれ歩む、そこはすごく納得なんだけれど……。

美樹: うんうん。

弓子: でも、私は「男はいらない」とは思わないのよ!

美樹: あ、そうでしたかー! そこは大いに違う受け取り方をしましたね。

弓子: 私自身は、「やっぱりそこに、男がいないとね」って思うの。恋愛なしに、男なしに「女」の生き方をどうやって表現するの? そうなると、ただの「人間」じゃん。ただの人間物語になっちゃう。それじゃ、昔と変わらない。

美樹: なるほど、なるほど。

弓子: 「女」っていうからには、セックスが。実際にエッチするしないっていう意味じゃなくて、「セクシャリティ」が絡むと思うんですよ。

美樹: ああ、なるほど。それもひとつの捉え方ですね。私は、映画の仕掛けとして「男」があったけど、実際のメッセージは「それぞれの女性の人生」なのかな、と、強く感じたんですよね。

弓子: なるほどねー。世代の違いで、受け取り方が違うのかな。それとも、私たちの個性っていうか、人生観の違いなのかもしれないね。

美樹: 面白いですね。

 

「人生をもう一度」って思うとき、
ときめきや愛が重要なんです

弓子: 60代の同世代と話をしていると、しょっちゅう「もういいよ、もう今さら、僕たちこんな年だし」って言うのよ。

美樹: 映画の中でも、そういうセリフが何度も出てきましたよね。

弓子: そうそうそう。でもね、中にはそう思わない人もいるわけ。「いや、自分はまだまだ」と。私もそのタイプ。そういう人とは、一緒にこの先の人生を楽しめるな、って思う。

美樹: うん、うん。

弓子: 映画の主人公たちは70歳ぐらいだったけれど、もっと若い時から。例えば50歳、60歳でも「まだもう1回、人生を……!」って思う時があるじゃない。そんな時、ときめきとか愛って、やっぱり重要だと思うの。「何歳を過ぎたら、女はおしまい」みたいに、世間は勝手に思ってるけれど、絶対そうじゃないと言いたい。

美樹: なるほどー。まあ、こんな風に、自分の人生観をあぶり出す仕掛けとして、この映画のテーマが「恋愛」だったのかなとも思いますね。

弓子: 私自身は65歳で「人生、まだこれからだわ! 私たちも、もうひと花よ!」と思っているけど、そういう人はまだ少ないと思う(笑)。やっぱり一般の人にとっては、まだ少し遠い話、あくまで夢物語なのかもしれません。

 

あなたは、幸せになるのを
恐れなくていい

美樹: 映画の中で、私が一番グッと来たところは、「あなたは、幸せになるのを恐れなくていい」っていうセリフ。非常に胸に刺さりましたね。というのが、私にもたぶんこの傾向があるからなんですね。

弓子: あのセリフは良かったねえ。

美樹: 恋愛にしろ、仕事にしろ、何か始める時には、誰もが一度は躊躇(ちゅうちょ)するじゃないですか。でも映画の登場人物たちは「それを超えていったところにしか、幸せや成功がない」ということを表現していましたよね。

弓子: そうね。

美樹: 「あなたは幸せになってもいいんだ」って、自分でちゃんと、何度も思わないと、人生の成功はないんだろうなって。改めて今日、突き付けられた。私も恐れていちゃいけないな、と。不格好ながらも次の人生に歩み出していく、映画の主人公たちを見て、すごく勇気づけられました。

弓子: 確かに、美樹さんはどちらかというと「人に尽くすタイプ」だと思うのよ! 人を助けたい、とか。何かあったとき、チームの中でのサポーター役っていうのかな。違う?

美樹: そうですね。わりと好きです。

弓子: そうだよね。だから「今度はあなた、誰かのためじゃなくて、自分のために生きていい」っていうのは、まさに、美樹さんのためのセリフかも。

美樹: でも、じゃあ自分に置き換えたとき、「どう一歩を踏み出していいのかな?」って思うんですよね。

弓子: 「みんなに迷惑かけるから」ではなく、「自分がしたい」っていう風に思い直すといいのかも。

美樹: なるほど。じゃあ私もまず、マッチングアプリで出会い探しですかね!? 映画ではそれで、いろんな人の人生が動き始めました。

 

自分の世代に向けた作品を見つけて
エンターテインメントを楽しみたい

弓子: この映画、私は、女友達と観に行くのが良いと思った!

美樹: あ、それはいいですね。

弓子: 女友達とこうやって、ワイワイ感想を言い会うのに向いた映画よね。

美樹: 私は、女1人で観に行くのも、しみじみと人生を考えられるので、良いと思いましたよ。

弓子: 確かにね。

美樹: 映画とか音楽とか、エンターテインメントって、基本的に若い人向けっていうのがあるじゃないですか。だから私は最近、正直ちょっと、遠ざかっていたんです。でも自分の年代に向けた、こういう作品が増えて来るんだったら嬉しいな。またエンターテインメントを楽しみたい、っていう気持ちが掻き立てられましたね。

弓子: それはいいね。

美樹: 先程の話にあった通り、マーケティング的にも、40’s世代以上に向けた刺激的な元気な作品が、今後も増えてくると私も思います!

 

映画『また、あなたとブッククラブで』
40’s読者へのお勧め度

弓子:★★★★☆(4点)
美樹:★★★★☆(4点)


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