2020年05月05日

干場弓子さん「楽しくなければ人生じゃない!」イベントレポート

去る2020年5月2日、Beautiful 40’s(ビューティフル・フォーティーズ)が一般社団法人化してから初めてのミートアップ「楽しくなければ人生じゃない!」をオンラインで開催しました。ゲストは、ビジネス書系出版社・株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワンCo‐founder・前取締役社長の干場弓子さん。

仕事を楽しむ達人である干場さんに、こんな状況下でも「人生を楽しむ」ための方法をインタビュー形式でお伺いするイベント。開催26時間前に決定し、緊急告知したにもかかわらず、なんと33名もの方にご参加いただきました。その内容を徹底レポートします。


干場弓子さん Yumiko Hoshiba

プロフィール
株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワンCo‐founder・前取締役社長。一般社団法人日本書籍出版協会理事。International Publishers Association(IPA)理事。日本オーディオブック協議会理事。ビジネス書大賞主宰。愛知県立旭丘高等学校、お茶の水女子大学文教育学部卒業。世界文化社『家庭画報』編集部等を経て1985年、株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン設立に参画。以来、取締役社長として、経営全般に携わり、書店との直取引で業界随一の出版社に育て上げた。2011年には『超訳 ニーチェの言葉』が同社初の100万部を突破。自ら編集者としても、勝間和代氏他多くのビジネス系著者を発掘、さまざまなシリーズを立ち上げてきたほか、グローバル展開にも積極的に取り組み、日本書籍出版協会国際委員会副委員長として、フランクフルト、ロンドンなどの国際ブックフェアへの出展を他出版社にも働きかけるなど、世界の出版界における日本コンテンツのプレゼンスの向上に努めてきた。近著に『楽しくなければ仕事じゃない』(東洋経済新報社)。

 

「センシュアル・シクスティーズ」
立ち上げ予告!?

Beautiful 40’s: さて、いきなりですが干場さんからお知らせがあるそうです!

干場弓子さん(以下干場): 去年、美樹さんからBeautiful 40’s(ビューティフル・フォーティーズ)のコンセプトを聞いたときに、ああ、すごくいいなと思ったの。それで私、「ディスカヴァーを辞めた後、Sensual 60’s(センシュアル・シクスティーズ)というのを姉妹サイトとして始めようかな」と思って(笑)。実はもうドメインも取りました。分科会ということで私もSensual 60’sを始めたいと思っています。

Beautiful 40’s: Sensual(センシュアル)……ってどういう意味ですか?

干場: Sexual(セクシャル)とは違う「官能的」という意味で、情緒や情感がある感じです。日本人って、女性である、男性であるということを含めた人間性というものがアピールできていない気がするんですよ。特に年を取ると。総合的に「男である」「女である」ということも含めた人間的魅力、全体的な魅力というものを、もっと受け入れていく。そんなことを訴えていけたらなと思っています。

 

『楽しくなければ仕事じゃない』で
伝えたかったこと

Beautiful 40’s: 干場さんは2019年11月に『楽しくなければ仕事じゃない』という本を出されました。まずはこの本で伝えたかったことをお聞きしていいでしょうか。

干場: 最初は『若者を不幸にする10の言葉』というタイトルを考えていたんです。「キャリアプラン」とか、「ワーク・ライフ・バランス」とか、「ロールモデル」とか、「夢を仕事に」とか「好きを仕事に」といった、一見美しい言葉、ポジティブな言葉が、実は、特に若い人を追い詰めているんじゃないかということを常々感じていたので。

というのも、私自身が、別に計画していたわけでもないし、キャリアプランも持っていなかったけど、社長になれた。逆に言えば「思っていた以上のことができた」んです! だから一般に言われていること、「常識」とか「前例」を疑うところから始めるべきじゃないか、というのがまずありました。

でもこのタイトルは、編集者から反対されちゃった。『楽しくなければ仕事じゃない』も自分で作ったタイトルで、これも反対されていましたが、結局このタイトルになりました。

私が仕事を通じて学んだことのひとつが、「人生、楽しんじゃっていいんだな」ということなんですよ。というのも、私は20代の頃まで、「楽しんじゃったらおしまいなんじゃないか」「満足したらおしまいなんじゃないか」「楽しんだら、いつかしっぺ返しがくるんじゃないか」「もっと人生って大変でつらいものなんじゃないか、そういう思いをした人が報われるんじゃないか」と結構本気で思っていました。楽しむんだけど、それに対してどこかで罪悪感をもっている感じ。

それが、ある時「あれっ? もっと人生を楽しんでいいんじゃないの?」と気がついた。そしたら、わあっと自由になれたんです。もちろん、現実は楽しくないこともあるんですけれど、ものごとはすべて「解釈」なので。同じ現実だったら楽しいと思った方が勝ち!と思えて、すごく自由になった。そのことを伝えたいなと思いました。

Beautiful 40’s: 私も、「苦しくなければ仕事じゃない」とか「つらいことを乗り越えていった先にしか幸せはない」と思いがちかも……。「幸せが怖い」というところもあります。

干場: そうそう! 「私たちには幸せになる権利がある」という言い方をすることがあるでしょう? でもそうじゃないの! わたしたちには、「幸せになる義務がある」の! そういうことも伝えたかったんです。

 

何か行動を起こせる人は
起こした方がいい

Beautiful 40’s: 拝読して、私が今まで感じてきたことは間違いじゃなかったんだな、ということを肯定していただける本でした。特に今、楽しんじゃっていいよ、とは少し言いづらい社会状況ですよね。今日のトークライブのテーマは「楽しくなければ人生じゃない」。仕事だけじゃなくて皆、人生という時間を生きていくわけなので、人生という部分に話を広げていただこうと思っています。

干場: 思い出すのが、東日本大震災の後のことです。出版社の社長を務めながらも「こんな時に、本なんて何の役に立つんだろう」「みんな水や食べ物を求めているときに、本って何なんだろう」と、すごく落ち込んでしまった。社会に貢献する、人々に良かったなと思ってもらえる、すなわち付加価値をもたらすのが私たちの仕事だ、と社員にずっと言ってきたし、自分もそう思っていたのに、急に「いったい何の価値があるんだろう」と真剣に思ってしまいました。

そういう気持ちをにじませるブログを書いてしまったときに、それを見た元・僧侶の小池龍之介さんが、私のために文章を書いてくれたんです。事実が人を苦しめるのではなく、そのできごとに対するそれぞれの解釈が人を苦しめるのだ、と。これを仏教で「第二の矢」というそうです。

なんか、あの時と似ているなって、今感じてる。新型コロナウイルスのおかげで何が変わりますかと尋ねられたら、「働き方改革やリモートワークが進む」といった表面的なことを言う人が多いんですけど、そうじゃないものもすごくあると思うんです。今のとんでもない資本主義を見直すとか、いろんなチャンスにできる。とはいえ、個人の中でどう消化していけばいいのか。私自身もまだ消化しきれていない状態です。

ただ、前向きなことを言っちゃいけないような空気というのはイカンと。こういう時こそ、人の真価が問われると思うんです。

Beautiful 40’s: 私たちも「ゴールデンウイークに何をする?」という記事をアップしたとき、「それどころじゃない人たちもいる」というお怒りのリアクションをもらったりしました。

干場: 何か行動を起こせる人は起こした方がいいと、私は思うんです。ただ言うだけの人は、ムカつくわけですよ! 何かできるんだったらやってほしいし、できないんだったらせめて、自分のことをがんばってください、と思いますよね。ほんと。


今回の参加者のみなさま

「ときめき」とそれを
聞いてくれる「友達」が大事

Beautiful 40’s: ここからは、干場さん流の「人生の楽しみ方」を聞いていきたいです。人生100年時代に、長い人生をどう楽しむのか。

干場: 人生の楽しみは、ときめきと、それをシェアできる友達、かなあ。 やっぱり異性、ときめき! プラトニックでも妄想でもいいと思うんです。友達も、本当の友達かどうかというようなことをそんなに深く考えなくても、ちょっとおしゃべりできる人。

Beautiful 40’s: だんたん話が夜っぽくなってきましたね(笑) ときめきを感じる相手って、パートナーとかに限らず「推し」(アイドルとかアニメの登場人物など)でもいいんですか?

干場: それでも構わないと思うんだけれど、私はあんまり経験がないですね……あ、そうだ、私は高校生の頃、力石(徹。漫画&アニメ『あしたのジョー』の登場人物)が好きだったんです。

会場: (爆笑)

干場: 再々放送くらいの時かな。私、友人たちがアイドルに夢中になっているのがうらやましくて。だって、彼女たちはそのアイドルに会う可能性があるわけじゃないですか。でも力石って二次元だし、その時点ではもう死んでた! なにしろ、再々放送だったから!(笑)*干場注:漫画の連載で力石が死んだ直後、編集部には続々とファンからの弔電が集まり、それを受けて、講談社では実際のお葬式が行われ、そこにも弔問客が押し寄せたそうです。

今、こうやってリモートでコミュニケーションするじゃないですか。すると、リアルとリモートの違いって何だろう、と考えるわけです。若い頃に読んだ『「ふれる」ことの哲学』という本を、この機にまた読み返してみたんですけれど、触れることは、見ること・聞くこととは違う。こちらが触れると、相手からすると触れられる、触れるということは相手の中に侵入することだ、みたいに書いてあるわけ。

私はいつもバーチャルとリアルの違いは、「殴られるかハグするか」の中で行うのがリアルだと言っているんですけれど(笑)、そういうものがない中でのコミュニケーションと、リスクとベネフィットを期待しながらのコミュニケーションは、全然違う。アイドルでも実際に会う可能性があるんだったらいいんですど、リアルに会うことを拒否したうえでの「ときめき」というのは、一種の逃避だと思いますね。

Beautiful 40’s: 人と実際に会ったときに、エネルギー交換をしている感じはありますよね。「以心伝心」という言葉は、会わないと成り立たないというか。オンラインだと、言葉を尽くさないと伝わらない感じもしています。

干場: 実際の触れ合いは大事よね。あと大事なのは、矛盾するようだけれど「ひとり力」。孤独力というか、ひとりでいても大丈夫な感じ。うちの家族も家にいるけれど、みんなそれぞれの部屋で、ひとりで好きなことを楽しんでいますね。うん、でもやっぱり、ときめきが大事だな(笑)!

 

人生を楽しめないときは
とにかく行動を起こす

Beautiful 40’s: 人生を楽しめないときは、どうしたらいいと思いますか?

干場: うーんそういう時はさ、考えていても進まないわけなので、私は「何か行動をする」ようにしてきました。動けば、何かが変わるじゃないですか。友人に「悩み事があれば話して」って言われていて、でも私があまりに何も話さないから「冷たいね」って言われたことがあったんですけれど。私としては、話すだけでラクになることってあんまりなくて。何か具体的に状況が変わるような「一歩」を踏み出してきました。行動を起こして、環境のゆがみを起こすというか。

Beautiful 40’s: 環境のゆがみを起こす……!

干場: 好きな言葉は何ですか、と聞かれると、いつも映画『風と共に去りぬ』のスカーレット・オハラのセリフ「Tomorrow is another day」って言うんです。スカーレットが、困難なことがあると、「ああ、もうだめだ、考えると頭がおかしくなっちゃう、今日はもう考えるのをやめて寝よう、明日考えよう」って言うんです。そして「Tomorrow is another day」になるわけですよ。だから私も、考えても仕方ないときは「明日考えよう」となる。「再生」、というか、明日はまた新しいスタートができる、という意味で。

Beautiful 40’s: 昨今の事情で、ものごとを悪い方へ悪い方へ考えてしまうとか、とても楽しめないと考えてしまう人も多いと思うんですけれど。そういう人はどうすればいいでしょう。

干場: 新型コロナウイルスの件に関して言えば、私はいろんな人の知見を読む/聞くようにしています。NHKでも、ネットでも、様々な専門家がいろいろなことを言っていて。楽観的な人もいれば、悲観的な人もいる。そういう報道をできるだけ偏らず読むようにしています。

というのは、「どうなるだろう」と悲観的になるのはただの「受け身」じゃないですか。悪いことが起きるかもしれないけれど、だったらその中で、自分はどうしていったらいいのか、「環境に働きかける」立場に自分の身を置くことが大事だと思うんですよ。受け身になるから、つらい。受動的でいるから、やられちゃうんです。

そうじゃなくて、自分から働きかける。働きかけるためには、いろんな人の意見を聞いて、見て、自分が納得感があるものを選ぶ。あるいは「総合してこういう可能性があるな」と考え、「自分はこうしていこう」とか「何ができるか」という風に一歩進む。なんであれ、どんな状況であれ、能動的になることが一番大事です。動いた結果、ダメだったとしてもね。

Beautiful 40’s: なるほど……! そういう干場さんの考え方、基本には何があるんですか?

干場: 無意識のうちに、実存主義とプラグマティズム(実用主義)の影響を受けてたと思います。私がサルトルをずっと読んでいるというわけではなくて、青春時代を過ごしたのが1970年代だから。’60年代の空気が広まっていった時代だったからと思っています。

だから、楽しめないとか不安になっちゃうのはわかるんですけど、できるだけ客観的に多様に情報収集をする。その中で受動的になるのではなく、能動的にできることは何かを考える。それは、ほんの小さなことでもいいと思うんですけど、まずはやってみることだと思います。

もちろん、その中には、自分や自分の家族の身を守るために、あえて保守的になることもあっていいと思いますよ。それでも能動的であることには変わりはないので。とにかく何かすることですね。

Beautiful 40’s: 今、できそうなことがたくさん提案されていますよね。たとえば「#コロナフードアクション」のハッシュタグを見て、テイクアウトの食べ物を買おう、ということでもいいし。補助金や融資の情報を、みんなでシェアしようということでも。

 

「自粛」になってから
干場さんが買ったものは?


干場さんの購入したZwilling J.A. Henckel の新製品

Beautiful 40’s: ところで干場さん、今回の「自粛」が始まってから何か買いましたか? 私たちの「自宅ライフを快適に! 今月、私たちが買ったもの」という記事の評判がいいので、干場さんにもお伺いしたいです。

干場: リモート会議用にバッファローのヘッドセット、「十全大補湯(ジュウゼンダイホトウ)」という免疫力を上げる漢方薬、あと、スマホスタンド……他にもありすぎちゃって。いろんなものを買ってます。佐川のお兄さんと、ヤマトのお兄さんと、JPのお兄さんと顔見知りになっちゃいました(笑)。あ、あと、ドイツの、ヘンケルスのブレンダーを奮発して買いました。

Beautiful 40’s: おお〜ブレンダーすごいですね! 何か「始めたこと」はありますか?

干場: ラジオ体操第一・第二と、楽体(らくだ)の肩甲骨ストレッチと、股関節をゆるめるストレッチと……。要するに、今までは会社に行くことによって運動してたんですけど、それがなくなっちゃったので、運動してます。

Beautiful 40’s: 会場から、干場さんの料理の投稿がまた見たい!というコメントが来ています。

干場: 最近投稿してなかったな。ありがとう、また投稿します!

 

オンラインでの
コミュニケーションの仕方

参加者からの質問: 自粛になってから、オンラインでしか会ったことのない人がいて、その人に対する自分の評価を信じるのが難しいと思っています。オンラインでのコミュニケーションの拡張の仕方が知りたいです。

干場: 40’sメンバーと先日「オンライン飲み会」をしていて、オンラインならではの気持ちを表す仕草、たとえばカメラにぐっと寄るとか、顔の周りで手を動かすとか、そういういう方法があるということを聞きました。

リアルだったら軽く表現できることを、こういう限られた空間の中でいかに表現するか、みたいな技術が、いろいろ出てくるんじゃないかなと思います。あと、オンライン会議の時、画面を見てちゃだめよね。やっぱりカメラを見ないと、伝わらない。

Beautiful 40’s: 干場さんはジェスチャーが大きいので、画面越しでもパワーが伝わります! 参加者からも「熱量がすごい」みたいなことが、チャットに続々と書き込まれています。さて、最後に干場さんからひとことお願いします!

干場: 今日はどうもありがとう! 私、「ひとり力」があると先ほど言いましたけれど、やっぱりこうやって、多くの人と繋がってるっていうのが、何より私のエネルギーの源泉だなということを改めて実感しました。またお会いしましょう。

Beautiful 40’s: 干場さん、参加者のみなさま、ありがとうございました!

 

楽しくなければ仕事じゃない
「今やっていること」がどんどん「好きで得意」になる
働き方の教科書
干場 弓子 著
東洋経済新報社 刊

 


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