ノルウェー出身の若い男と暮らしてみれば vol.1
文/池田美樹(編集部)
一目惚れ、とはよく言うが、私の場合、そうではなかった。
目が合った、ともよく言うけれど、そうでもなかった。なにしろ、初めて会ったときに、彼はこともあろうに寝ていたからだ。
こういう場合、こちらに向かって懸命に訴えるものではないのか? 僕を見て、と。現に、他の部屋にいるうら若き小さき者達は、瞳をキラキラさせながら訴えかけてくる。
名は知らない。なぜなら、彼らにまだ名はないからだ。私は心の中で、喧噪の中でぐっすりと眠り続ける彼に、密かに名を付けた。ルル、と。
写真/眠り続けるルル。これが初めての出会い。
翌日も私はその店に出かけた。もう腹は決まっていた。彼を買おう。
それは、やっぱり忘れられないという理由ではあったけれど、少し事情が違った。昨日見た彼の出身地の名のついたプレート。そこにはこうあったのだ。
ノルウェージャンフォレストキャット、生後6か月、10万円引き!
10万円引き、と赤で書いてあった。
彼は今日も寝ていた。生後1か月から3か月ほどの小さき者達が次々と高値で売れていく中、きっとすこやかにぐんぐんと大きくなり、なんだか大きいわねえ、もう生まれてからけっこう経っているわねえ、という理由で敬遠され続けてきたのではないか。
もはやこれまで、と、店は起死回生の勢いで10万円引きにしたに違いない。なぜなら、生まれたときの値段では、決してもう彼は売れないから。
ならば、私が買ってやろう。そう思ったのだ。売れ残ってしまった彼らのその後の運命のことは私は知らない。けれど、今なら私は彼のことが救ってあげられる。不遜にもそう思ってしまった。
そして言った。
「この猫、今日、連れて帰れますか?」
写真/我が家に来た当初。おびえて家具の裏からなかなか出てこない。
果たして、救われたのはどっちだったか。結局、私の方ではなかったのか。そう思いながら、あれ以降、このノルウェー出身の若い男と暮らしている。
廊下の隅に、トイレスペースをつくった。水は24時間、フィルターで浄水されるタイプの水やり器だ。リビングには私の背よりも高い8段のキャットタワーを設置した。おもちゃが部屋中に散乱している。
世の中は「人間中心」が流行りだが、我が家は瞬く間に「猫中心」だ。私の生活も「猫中心」デザインだ。
独り身で、自分のペースのみで長いこと生活してきた。こうやって振り回されるのも悪くない。そんな猫と私の生活について、これから綴っていこうと思う。
写真/池田美樹(編集部)
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