2019年10月29日

人生の「ブランク」について|2019年10月の座談会

 

人生の「ブランク」について|2019年10月の座談会

東京で、強く、美しく、賢く働く40代のためのメディア「Beautiful 40’s(ビューティフルフォーティーズ)」。
今月のテーマは、人生の「ブランク」について。転職するとき、そして定年退職するとき…。人生に必ず訪れる「ブランク」の期間について考察してみました。

【左】ディレクター 及川恵利 >twitter
【中】編集長 池田美樹 >twitter
【右】プロデューサー 守山菜穂子 >twitter

 

これからジョブハントだねと言われて
ショックだった!

美樹:今日は「人生のブランク」について話をしたいな。なぜかというと、つい先日言われたことが結構ショックだったんですよ。今、私、大学院を出て、ピースボートに乗って、なんかブラブラしてるように見えるらしくて(笑)、「美樹さん、いよいよこれからジョブハントだね」って言われたの。今も何もしてないわけじゃないんだけど、会社員の人から見ると今の私って何もしてないように見えるんだなあと思って。

恵利:それ、フリーランスとしても認めてもらってないっていうような意味合いかしら?

美樹:そういう意味ではないみたい。フリーランスのエディターですとか言っても、どこの仕事したよ、ってあまり言わないじゃない? Facebookに書くわけでもないし。そういうわけで、ただブラブラしてるように見えたみたいね。

恵利:なるほど。

菜穂子:空白期間、人生のブランクっていうことですね、美樹さんの。

美樹:うん、そうなんです。

菜穂子:人生のブランク期間っていう言葉が自分の辞書にないタイプな人なのかもね。

恵利:経験がないからわからないっていうほうが正しいかもしれないですね。

美樹:そうですね。

恵利:会社勤めしていない、あるいは何かの肩書きでこういうことをしたと見せるものがないと、何もしていないんじゃないかとしか想像できないのかも。

美樹:そうね。私、今、休職してるわけじゃないし、いろんなことの準備も進めてるし、日々やることもあるし、ブランクの中にいるのは確かなんだけど、それはフラットな空白じゃないわけ。すごく楽しんでるしね。おふたりはそういうブランクの経験ってありますか?

菜穂子:私の1回目のブランクは、最初の会社に2年勤めて転職するときに1週間だけ休みを取ったこと。

美樹:1週間。

菜穂子:でもこれはあんまりブランクって言わないよね。

美樹:そうかも。

菜穂子: 2回目のブランクは2社目の会社を辞めて独立するとき。有給を1か月使って、海外旅行に10日間くらい行ったりとか、あと起業の準備ですね。会社を辞めてからも実際の仕事が始まるまで1か月くらいあったので、その2か月くらいはブラブラしてましたね。でもそれって、私にしてみれば起業準備期間なんだけど、まあ、外から見ると何もしてないように見えたでしょうね。

美樹:そうかも。

菜穂子:空白ですよね、肩書がない期間だから。

美樹:そういうブランクが人生のある時期に訪れる人って、私たちみたいに会社を辞めた人なのかしら。起業するにしても準備期間は必要だし。私の場合はね、会社に22年勤めたの。その間にブランクはなかったんだけど。

菜穂子:そうですよね。

美樹: 22年勤めて辞めて、大学院に行っている間も仕事っていう意味ではブランクだよね。でも、ああ、こういう期間ってすごくいいなと思ったのよ。今日もとあるセミナーに行ってきて、そこでグループワークをしたんですけど、同じグループにいた方が、会社を辞めたいと言ったら上司に「じゃあ1年休め」って言われて、1年休んだばっかりなんですって。そうしたら、あんなに辞めたいと思い詰めてたのに、今はむくむく仕事をやる気がわいてきたって言うのよ。

恵利:すごい。

菜穂子:そして復職したっていう話ですか?

美樹:そうです。

恵利:1年休める会社ってそうそうないと思うんだけど。

美樹:どういう制度で休んだのかわからないんだけど、「今すごくやる気に満ちあふれてるんです」って言ってて、ああ、いい話だなと思ったのよね。

菜穂子:いわゆるサバティカル休暇ですね。大きい会社だとありますよね。私が前にいた会社もありました。

恵利:あ、そうよね。

菜穂子:「クリエイティブ休暇」っていう名前なんだけど、1年休めるんです。たとえば専門学校で勉強したいとか、海外に行きたいとか、申請書を書くんですよ。それで世界を放浪して歩いて、その間もブログを立ち上げて各地域で見たものを書いている人とか、専門学校に入ってがっつり1年勉強してる人もいたし。旦那さんの転勤に付き合って海外に1年、子どもと3人で住んでた人もいるし。みんな上手に1年休んで、経験を積んで帰ってきてたので、すごくいい制度ですよね。

美樹:それは審査があるの?

菜穂子: 1事業部につき1人しか取れないの。

美樹:なるほど。

菜穂子:だから、あの人が何月に帰ってくるから次は自分が、みたいに狙いながら、でも他の人と被っちゃうとどっちかしか取れないみたいな。同じ事業部で何人も休むと困っちゃうから、調整はしてましたね。

 

足元がフワフワする感じが
気持ち悪いようないいような。

美樹:最近、サバティカル休暇が取れる会社がちょっとずつ増えてきている印象はあるけれど、あまり取られていないという話も聞きますね。やっぱり日本人って休むのに慣れてないのかな。恵利さんはブランクってあった?

恵利:ブランクって聞いたときに、私、ないなって思っちゃったんですよ。転職は1回しかしていないし、その間のお休み期間ってほぼゼロなんですね。ほかには大学卒業から就職までの間くらいしかない。つまりゼロですね。だから、仕事をしないっていう意味での空白期間ってちょっと怖いな、取れないなと思ってしまうんですよ。ただ、おふたりの話を聞いていると、必ずしも何もしなくて休んでた、というわけじゃなくて、充電期間っていう意味合いのほうが強いのかなと。

菜穂子:そう思う。

美樹:そうですね。

恵利:聞きたいのは、休む前に「この期間、何をしよう」と明確な目的を持ってブランクを取ったのか、あるいは偶然取って、結果、すごく充実してたな、プラスになったなということなのか、どっちなんでしょうね?

美樹:私の場合は大学院に行こうっていうのがあって、それで会社を辞めたから、目的があったといえばあったんでしょうね。でも、さっき話した1年間会社を休んだ女性は、何もしなかったって言ってた。ただ家族との時間を楽しんで、それこそブラブラしてましたって。でもそれで自分の中にじわじわ力が溜まっていったって。本当に追い詰められるほど辞めたかったって言ってたから、大きな変化ですよね。

菜穂子:疲れてたんですね。

美樹:でしょうね。

菜穂子:気力充電するための1年だったのかも。ゆっくり家族としゃべって、ゆっくり寝て、おいしいもの食べて、のんびりしてたら、「うん、働かなきゃ」って思いますよね。

美樹:だから、どっちもありなんだと思います。充電してもいいし、何かの目的に使ってもいいし。

菜穂子:私は会社を辞めて独立するまでの間の2か月くらいがブランクでしたけど、もう、フワッフワなわけ。なんにも決まってないから。足元がフワフワしちゃって、それが気持ち悪いような、気持ちいいようなという感じでした。オフィスを探したり、新しい名刺を作ったり、人に会って辞めるんですって挨拶してご飯を食べたりとかしてたんですけど。

美樹:へえー。

菜穂子:本当にフワフワーっていう感じで、おもしろかったですよ。

美樹:それって自分が何者でもないっていう感覚?

菜穂子:そうそう。それですね。

恵利:ああー、そっか。

菜穂子:会社の名刺はまだあるけれど、そこで仕事はしていない。自分の名刺はまだない。「起業するんです」と言って「何するの?」と聞かれても、具体的にはさほど決まってない。とにかく確実に辞めることだけ決まってます、みたいな状態。新しい、自分の個人事業主としての名刺ができたら、ちょっと安心しましたね。

美樹:そういうフワフワしてるときに、それに負けなくてもいいっていうか。必ず自分がやるべきことがまた訪れると思うから、不安に思う必要はないっていう気もしますよね。

菜穂子:そうですね。あと、周囲のスピードが変わった感じがすごくあった。それまでは結構、全速力で走ってたから、自分だけ止まってみたら、周りがすごいスピードで動いてる。

美樹:あーその感覚ある。

菜穂子:会社員の皆さんはいつも通り過ごしてるんだけど、離れたらもう、何をしゃべってるのか良くわからない。自分だけ止まってる感じ。でも止まってるから道端の花が見えるみたいな、そういう感じもあって、すごくおもしろかったですね。

恵利:産休や育休を取っている人も、似た感覚なのかもしれないですね。

菜穂子:違うものが見えてくる。

恵利:でも単なるブランクじゃなくて、出産、子育てっていうものすごく大切な時期を過ごしていらっしゃると思うので、焦る必要はないんでしょうね。

菜穂子:介護休暇もあるよね。

恵利:そっかそっか。

菜穂子:介護で休まなきゃいけないとか、実家に帰らなきゃいけないという人もいると思うけど、その時間もブランクとして楽しんで欲しいですね。以前、熊谷美雪さんと篠田寛子さんの対談で、篠田さんが「介護の間、仕事をセーブして地元にいたから、この機会に習い事でもしようと思って、色々習い始めた。介護がきっかけで趣味の時間を持つことができた」とおっしゃっていて、すごくいいなあと思いました。

 

役所にはおもしろい案内が
たくさんあるので使わなきゃ損!

美樹:以前、菜穂子さんが、役所に行ったらおもしろい情報があったよって教えてくれたことがあったと思うんですけれど。

菜穂子:そうなんですよ。私、休んでる間にいろいろな手続きで区役所に行ったら、区役所にセミナーの案内がいっぱい貼ってあって、それがすごく安い値段なんです。たとえばエクセルとか、プログラミングの基礎とか、財務諸表の見方とか。ビジネスに必要なことから、筆ペンで文字を書くといったことまで。

美樹・恵利:ああー!

菜穂子:「あ、こういうのが数千円で受けられるんだ、すごくいいな」と思って。復職したい人向けの公的補助がたくさんあるんだなと初めて知りました。

美樹:そういうの全然知らないよねー。

菜穂子:だから、たとえば専業主婦で、10年間は子育てしてて、復職したいんですっていう人には、区役所に行ってみたら? 商工会議所に行ってみたら? サポートがいろいろあるよ、という話をしています。ブランクが空いたことによる技術的な不安っていうのは、確かにあると思うので。

美樹:私も探しに行ってみたくなった。私の友人で、先日、大手企業を辞めた男性がいるんですけど。しばらくは失業保険をもらいながらちょっと心身を休めるって言ってたのに、いざハローワークに失業保険をもらいに行ってみたら、そのまま職業訓練校に入っちゃったんですよ。

菜穂子:自治体が運営しているものですね。

美樹:そうですね。無料のものと、有料のものがあって、職能を高めるための訓練が受けられるらしくて。

菜穂子:プログラミングとか、ファッションとか、実は科目も色々と選べるんですよね。

美樹:暇にしてるよりそういうのをやったほうがおもしろいからって、友人は今、楽しく行ってますよ。

菜穂子:いいですね。例えば急に会社をクビになったとか、介護しなきゃいけない、予期せぬ体調不良でブランクができちゃった、こんな事情で慌てることもあると思うんです。ただ、そのブランク自体は、悪いことでも良いことでもなく、ただの空白でしかない。できたブランクをどう使うかは、全く自分次第ですね。

恵利:なるほどね。つまり選択肢がいろいろあるのね。会社を辞めても最低限サポートしてくれる体制もある。あと気になるのは、周りの人の見方かな。「社会的に、名刺を持ってないといけない」みたいな雰囲気ってありますよね。

美樹:人目が冷たい、みたいな。

恵利:そうそう、それはちょっとどうなの? って思う。

美樹:私、「ジョブハント中だね」って言われたときに、それに対してものすごく弁解をしようとしてる自分もいたわけ。

菜穂子:あーなるほど。

美樹:「今、こういうことも、こういうこともやってて、こういうことも計画しててね……」って言いたくなったんだけど、いや別に、それ言わなくていいじゃんって、ハッと冷静になった。私は今、ブランクっていう時間を楽しみつつ、ステップを踏んで、いつでも1歩が踏み出せる状況にしてるわけだから。

 

ブランクという充電期間を
有意義に使おう!

美樹:人生100年時代、会社に行っている人は65歳になったら、もうそれ以上勤められない。

菜穂子:90歳くらいまで働かなきゃいけない訳だし、私たちは医療介護の進歩で100歳ぐらいまでは生きてしまいますし、人生に何回か、ブランクが必ず発生しますよね。

美樹:どうせ必ず発生するわけだから、そのときにアワアワするよりは、ブランクの使い方を今から考えておくだけでもいいかもしれない。

菜穂子:なんで「ブランク=悪」と捉えられているのか、私はちょっとよくわかんないですね。昔は定年まで勤めあげて辞めて「めでたしめでたし」「定年おめでとうございます」みたいな感じだったから、ブランクが悪になっちゃってるのかな? 「無職」という言葉のイメージが悪いのかな。

恵利:想像力の問題ですかね。今いろんな生き方があるのに、それが想像できない。私の前の会社の先輩が、ご夫婦で同じ会社に勤めていらっしゃるんですけども、早期退職で50代でお辞めになったのね。そのときに「次、何やるんですか?」って質問をしそうになった自分がいて。でもね、ご本人は「先のことは何も決めてないのー」って。その選択肢が、しかもご夫婦でできたって、素敵だなあと思いました。

菜穂子:かっこいいですねー。

恵利:かっこいい。私だったら、怖いなっていうのが先に立つんですけど。本当に人それぞれ選択肢があり生き方があるので、ブランクは次に何かをやるステップであり、その次が仕事じゃなくて充電期間でもいいんだなと思いました。まったくの空白じゃないんだなって思った。

菜穂子:でも、「次、何するんですか?」って聞きたくなる感じはわかる。

美樹:いろんなブランクの最中っていう人が、世の中にいっぱいいるから。

菜穂子:いるってことに気づくのは、多様性を受け入れることですよね。お勤めだけがすべてじゃないよっていう。人生の使い方の多様性ですね。

恵利:そのとおり。

美樹:まだそこにはきちんと明文化されたものがないような気がするな。

菜穂子:確かに。そうだなー、私は人生のどこかで、仕事スをパッと休んで、留学とかしたいですね。今からでも。

美樹:ああー、いいですね。

菜穂子:人生にやりたいことのいくつかのうち、確実に積み残してるのが「海外留学」なんですよね。今のところできてなくて。ガツーンと3年くらいどこか行きたいですね。急に「これから3年、ニューヨークに行ってくるからー」とか言いだすかもしれませんので、その際はよろしくお願いします。

美樹:そういうことを想像するのも楽しいよね! 私もまた勉強したいことがあるので、もう1回大学院に行きたいなと思ってて。最終的には60歳までに臨床心理士の資格を取りたいなと思ってます。

恵利:かっこいい。やっぱりエネルギーがあるって大事よね。

美樹:必ず訪れるブランクだから、今のうちから心の中でだけでも準備しておくといいよね。

菜穂子:怖がらずにブランクを使おう、と。

恵利:ブランクという名前の、充電期間ですね。

 

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