2019年05月12日

ひと晩乗ってもまだ日本だった〜ピースボート乗船記【2】

2019年4月20日から8月1日まで、第101回ピースボートに乗船して世界一周中の編集長・池田美樹。船上から、旅のつれづれをお届けします。

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4月20日、土曜日。横浜大さん橋には風があり、端のほつれたUW旗がはためいていた。「安航を祈る」という意味だ。チェックインしてパスポートを預け(なにしろ20か国も訪ねるのだから!)、船に乗り込んだら、部屋で荷物を広げる間もなく避難訓練が始まった。オレンジ色の救命胴衣を身につけ(水に濡れたら光るという装置が左胸のあたりに取り付けられている)、警報が鳴ったら定められた場所に行き、指示を待つ。指示が出たら救命ボートへ移動する。

救命胴衣をつけると下が見えなくなり、まるで力士にでもなったみたいだ。身体の自由もかなり奪われる。実際にこういうことにならないといいなあ。海に投げ出されるのって、想像するだけでもいやじゃないですか。そう思ううちに訓練は終了した。そろそろ出航の時刻が近づいてきた。

デッキに出ると、紙テープが配布されていた。できるだけ遠くまで届くようにと投げた紙テープは、空を切るばかりで向こう岸まで届かない。104日間の旅への出発を見送りに友人達が来てくれていたのだけれど、デッキの隣にいた80代のおじさまに話しかけられて、しゃべっているうちに、船は岸を離れていた。あっけないものです。友人達に見えるかなと大きく手を振ってみる。ちなみにおじさまには、40代の恋人の写真を見せてもらった。

出発してしまえば後は何をすることもない。出航は13時。さっそくランチが提供されていると聞いてデッキから展望できるレストランに出かけてみる。鶏の唐揚げをハンバーガーに仕立てたものと、お椀に入ったコーンスープ。いかにもこのちぐはぐな感じがこれからの旅を象徴しているような気がして、見上げると船は横浜ベイブリッジをくぐり抜けていた。

今回は、窓付きの2人部屋を予約してある。よく居酒屋などで見るピースボートのポスターには100万円前後の値段が書いてあるが(日数によって多少上下する)、それは2段ベッドの窓なし4人部屋の価格である。とはいえ、早期割引やボランティアセンターで活動など、いろいろと割引される機会は多く、私の場合は保険などのオプションを含めおおよそ220万円を支払った。

隣に来る人は誰だかまだ知らない。横浜を出航しても現れないところを見ると、大阪から乗り込んでくる予定の人なのだろう。同性の、同じくらいの年齢の方と組み合わせるのだと聞いている。今夜ひと晩はまだひとりだ。これ幸いと、部屋中に荷物を広げて、あるべき場所にものをしまっていく作業を始める。

なんと言っても、これから約3か月半をこの部屋で暮らすのだ。クローゼットは思いの外広く、ハンガーは22本あったので11本ずつ左右に分けた。そこに、持ち込んだプラスチックハンガーもかける。スーツケースから服を引っ張り出したらしわくちゃになっていたので、自分のプラスチックハンガーにかけて、持ち込んだ霧吹きでたっぷりと水を拭きかけてベッドのまわりにぐるりと巡らされたカーテンレールに吊り下げておく。

引き出しは縦に並んで6つ。同じ部屋の住人と3つずつ分けることになるが、先に開けやすい上の3段を取ってしまうとずるいかなという意識がはたらき、下の3段をもらうことにした。いや、交互に3段にしたって良かったんですけどね。

翌朝。ひと晩経っても、まだ4Gの電波はバッチリ入っている。Googleマップを立ち上げてみると、まだ和歌山県沖だった。そういえば、船は飛行機だったら1時間で到着してしまうところを1日かけて進むのだと言っていた。この速度で地球上を進んでいくのかと体感したところで、船は大阪への到着を告げた。

 

写真/ふるしょうかや


2019年05月12日 Posted by eri | カテゴリー: Life-Style | タグ: , , , , ,

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