2019年04月15日

「おばさん」は、悪なのか?|2019年4月の座談会

「おばさん」は、悪なのか?|2019年4月の座談会

東京で、強く、美しく、賢く働く40代のためのメディア「Beautiful 40’s(ビューティフルフォーティーズ)」。新緑輝く4月の座談会は、40代を「おばさん」と呼ぶか否か?問題について。もちろん、おばさんですよね? いやいや、おばさんじゃない。ではなんと呼ぶか? 議論が炸裂(さくれつ)しました!

【左】ディレクター 及川恵利 >twitter
【中】編集長 池田美樹 >twitter
【右】プロデューサー 守山菜穂子 >twitter

 

40代がちょっと気になるキーワード
それが「おばさん」。

美樹:4月1日に新しい元号「令和(れいわ)」が発表されて、いよいよ「平成」も終わりに近づいてきましたね……!! 31年まで続いたなんて、平成ってすごいよね。

恵利:平成元年に生まれた人が、今年30歳、31歳ね。

美樹:「平成生まれが社会人になる」と騒いでいたのが、ついこの間と思ってたんだけど、もうそんなに(笑)

菜穂子:元号が変わるのは人生で2回目だけど、なんだか不思議ですね。私はふだんは西暦を使う派だけれど、日本人として、これはやっぱり、特別にドキドキしますね。

恵利:歴史的な瞬間!って感じ。

菜穂子:そこに立ち会えて嬉しいよね。

美樹:ほんとにそう思います。

恵利:さて。今日の座談会のテーマはズバリ!「おばさん」です。

美樹:今の「Beautiful 40’s」中で今、圧倒的に読まれてるのが「おばさんといい女の違い」という記事なんですよ。

菜穂子:2016年、平成28年の記事ですね。3年も前なのに。

美樹:まだウェブサイトができる前、菜穂子さんと私が2人の自主企画として、ブログでやってた時代のコンテンツです。

恵利:この記事は、ほとんどの方が検索から入って来てますね。

美樹:さっき私もGoogleで「おばさん」と検索してみたんだけど、この記事はかなり上位に来ます。

菜穂子:SEO対策的に言うと、すごいビッグワード取れてる(笑)。そもそも「おばさん」ってなんだろう?と疑問に思ってあれこれ調べている人が、うちの記事に来てくれているということね。

恵利:確かに「おばさん」という言葉には、ちょっと引っかかる何かがある。「おばさん」って、なんだろう?

 

「おばさん」=ずうずうしい人
になったのはいつから?

美樹:私は編集者なので、こういう時はまず、辞書を引いてみるんです。そうすると「おばさん」には2つの漢字があることがわかりました。「伯母さん」と「小母さん」。

恵利:「伯母さん」は親戚のほうですよね。

美樹:そうです。そして今回、注目したいのは「小母さん」の字の方。辞書によると、本来は、小さい子が、年上の女性に親しみを込めて呼ぶ言葉なんだって。

恵利:ええ〜? そうなんだ。今、その意味は完全に薄れちゃってるよね。

美樹:「おばさんだから」って、自虐(じぎゃく)とか皮肉みたいな使われ方が、今はメインだよね。これも、確かに辞書には2つ目の意味として載っています。今、その2つ目の意味が異常に強くなってるのは、なぜなんでしょう。

菜穂子:自虐ならまだ良いじゃないですか。今は、人が人を攻撃するときの悪口の言葉にまでなってますよね。

美樹:それがどうしてか考えてみたんだけど、もしかしたら、自分も在籍していたことがあるから言いづらいんだけど、「女性誌がおばさんという言葉を、悪くしてしまった」のかと思ったんです。

恵利:「おばさんファッション」とか?

美樹:最近だと「オバ見え」とかね。

恵利:ほんとだ。女性誌がおばさんという言葉を使うとき、残念なニュアンスがある。

菜穂子:そういえば「オバタリアン」って言葉あったね(笑)

恵利:あー、あった! あれはマンガかな?

美樹:あったあった。昭和かな、平成かな。

菜穂子:昭和かもしれない。大仏(だいぶつ)パーマの、怖いおばさん。今スマホで調べたところによると、「1986年公開のホラー映画『バタリアン』から成る合成語。羞恥心(しゅうちしん)がない・図々しい・無神経といったおばさん特有の要素を持つ、中年女性を意味する」だって。「マンガは1988〜1998年にかけて連載」だから、ちょうど昭和の終わり、平成のはじめに流行った言葉だね。

美樹:なるほど、ホラー映画にかかってるのか。それは怖い。

恵利:そうかあ。だから、30年前ぐらいから「おばさん」という言葉は、「ずうずうしい人」というイメージになってしまったのね。

美樹:ずうずうしい人……。

恵利:確かに、人目も構わず、ちょっとマナーに反することやっちゃったりとか。そういう人はいますしね。

美樹:でも、それって昔からいるよ。そういう人が「おばさん」っていう呼称になっちゃったんだね。だから「おばさん」という言葉に、すごく過敏に反応する人が出てきたんだな。

菜穂子:過敏に反応する人が、「おばさん」と言う言葉をさらに糾弾する。「おばさん」という言葉は嫌われ者になる。

恵利:負のスパイラルに陥ってるよ……!

美樹:自分は実際にもう「おばさん」だから、おばさんと呼ばれてもなんとも思わないんだけど。菜穂子さんも似たようなこと言ってたよね?

菜穂子:ハイ。私も自分のことおばさんだと思っているから、そう呼ばれても、実は何とも思わない(笑)。

美樹:でも今回、改めて辞書を引いてみて、「おばさんって、親しみを込めて呼ぶ言葉だったんだ」って知って、良かったと思う。「小さい母」っていう漢字は、とてもいいなって思います。

菜穂子:ほんと。「リトル・マザー」っていう意味を知って、けっこう好きになれる言葉だぞ思いました。自分より若い人に「リトル・マザー」と慕われてるのかな、と、勝手に感じるようにしよう。

 

30代から70代までの女性が
ぜんぶ「おばさん」?

恵利:そもそも「小母さん」と言う言葉の前提に、「母」や「母性」があるじゃないですか。でも今は、子どもがいない、母じゃない女性たちがたくさん出てきた。

美樹: 2035年、令和17年には、子どもを一度も生まない女性が、3人に1人ぐらいの割合になるという推計もあるくらいなんですよ。

菜穂子:そんなに増えていくんだ。

恵利:「子どもを一度も生まない、40代以上の、仕事や社会で活躍してる女性」が今、増えてきたけど、その人たちを表現する言葉がないんですよ。そのゾーンを総称する言葉が存在しない。

美樹:確かに、私たちぐらいの年齢で、子どもがいなくて、働いてる人は「新しい人類」だもんね。昭和の時代には、ほとんどいなかったわけだから。

恵利:気が付いたらこの年齢。でも、ちょうど良い呼ばれ方がない。だからといって「おばさん」という言葉は、ずうずうしいイメージがあってイヤ。みんなそう思っているんじゃないんだろうか。

美樹:本当だ! 新しい呼び名を作っていく必要がありますね。

菜穂子:確かに、「女子」と「シニア」の間が全部「おばさん」だもんね。それは広すぎるわ。戦後すぐぐらいは、40代とか50代で亡くなった人も多かったし、1990年ぐらいまで会社の定年は55歳だった。ここに来て医療の発達で「人生100年時代」になっちゃったから、「女子」の後が本当はめっちゃ長いんだけど、全部「おばさん」で片付けられる(笑)。「50年間ぐらいおばさん」っていうのは、さすがに無理あるよね。

恵利:適する言葉がないんですよ。

菜穂子:ほんとだね〜。言葉が存在しない。

美樹:過渡期なんだね。今そのゾーンにある言葉は「オトナ女子」くらいかな?

菜穂子:ああ。でも私自身は使う気が起きない言葉だな。だって「オトナ女子」って、根本的に矛盾(むじゅん)してません? 「黒い白馬」「低い高層ビル」みたいな。

美樹:確かに(笑)

恵利:あと、別に「女子」を引きずりたいわけじゃないんだよな〜。

美樹:わかる。他に言葉がないから使っちゃう、というところはありますね。

菜穂子:他の言語で、ちょうどいい言葉はないのかしら。

恵利:私、20〜30代の時に一人旅でフランスのパリに何度か行ったことがあるんだけど、最初は「マドモアゼル(mademoiselle)」って呼びかけられてたのね。「お嬢さん」という意味。それが、ある年に「マダム(madame)」に変わったの! そのとき「私って、マダムって扱われるんだ」とびっくりして。

菜穂子:うわ、すごい素敵。「マダム」って扱われるの素敵です。

恵利:素敵でしょ? 年齢を経た実感はもちろんあるけど、言葉としてね、イヤな感じがしなかったの。なので、「そっか、フランスは、年上の女性に対する文化や、見る目がちゃんとあるのね」と思いました。

美樹:フランスでは、ちっちゃい女の子に対して「マダム」って呼びかけるのは「敬称」なんですよ。

恵利:それも素敵。

菜穂子:大切にしてる感じがしますよね。

恵利:日本で、言葉がない。ということは、敬う見方ができていないという意味ですよね。日本では年配の女性を敬う土壌がいまだ育ってないのかなって、思ってしまった。

菜穂子:英語だとどうなるの?

美樹:英語では、「ミス(Miss)」じゃなければ、全部「ミズ(Ms.)」になるかな。

菜穂子:年齢は関係ないのか。年が離れていても“ Hi, Miki ”っていう呼び方するものね。

恵利:昔は「ミセス(Mrs.)」という呼び方があったけど。

菜穂子:「既婚者の女性」って意味でしょ? 学生の時に習った英語はMr./ Miss/Mrs.の三択だった。

美樹:私の若いころはMiss.とMrs.しか書いてない書類も、けっこう見たよ。でも今のアメリカは「ポリティカル・コレクトネス(political correctness)」の意識が強いから。性別とか人種に対して中立的な言葉を重視するでしょう。だから既婚・未婚とか年齢を問わずに、ミズ(Ms.)という表現に統一されていったんだよね。

恵利:あと、絵本で見たことがあるんだけと、年上の人への敬称で「マーム(ma’am)」っていうのもありますよね。

美樹:アメリカの軍隊では、女性の上官に向かって「イエス・マム!」って言うよね。

菜穂子:あ、それって「小母さん」と同じ意味だ。女性の上官が、仮に30歳だったとしても、自分より年下だったとしても、「マム」なわけでしょ。

恵利:同じだね。あと英語でも「マダム」とも言うよね。

美樹:だからやっぱり、日本語だけ「おばさん」っていう言葉に、特別にイヤな意味がついちゃった、っていうことなんだ。なんだか寂しいね。

 

マチュアな女性が
この20年で日本に増えてきた

菜穂子:「おばさん」が悪になっているのは、若いもの、新しいものが好きな日本人ならではだと思う。若いが「善」で、古いが「悪」。古いものを十把ひとからげに「悪」として扱う文化は、私はすごくキライ。日本特有の現象だなって思いますね。

美樹:でも一方で「盆栽(ぼんさい)」や「骨董(こっとう)」といった文化も、本来あるはずなんだけどね。

恵利:「年輪」みたいな意味の、「成熟した女性」っていう意味の日本語が増えるといいな。

菜穂子:先ほどの「マダム」は外来語だけど、日本でも定着していいと思う。「マダム」って呼ばれたら、すごく嬉しいな。

美樹:「マダム」いいよね。

恵利:マダム美樹と、マダム菜穂子と、マダム恵利ですな!

菜穂子:きゃは〜。良い良い。他に日本語に、そういう言葉はないよね。

美樹:新しく生まれてきた世代だから。歴史がないから、呼称がないのも当然なんだよ。これから、私たちが考えて名前をつけていけばいい。

菜穂子:作りたいですね!

恵利:あら、作っちゃいます?

菜穂子:「Beautiful 40’s」の熊谷美雪さんの連載タイトルにもつけていただいたんだけど、私は「マチュア(mature)」という言葉が定着して欲しいと思っていて。

英語の同時通訳を長年されていた先輩にも伺ったことがあるのですが、英語圏の人たちは「マチュアな女性」ってすごく良い意味で使うらしい。「あんなマチュアな女性になりたいよね」って、日常的に使うそう。

恵利:あまり耳慣れない。

菜穂子:だよね。しかし20年前に一度ね、女性誌で「マチュア」を流行らせようとした時期があったんですよ。男女雇用均等法の改正が出た頃です。「キャリア女性」っていう人たちが社会に出てきて、「キャリア女性誌」が続々と創刊して。一斉にいろんな雑誌が「マチュア」っていう言葉を使い始めた。

美樹:私も雑誌の原稿で、積極的に使ってました。

菜穂子:でも、定着しなかったんですよね。

美樹:しなかったです。なんでだろうね。「マチュア」って、言いにくいのかな?

菜穂子:概念として「なさすぎた」んじゃないでしょうか。当時は「キャリア女性」、つまりプロパーで働いている女性が増えたというだけで、概念的に、いっぱいいっぱいだった。その前は「お局(つぼね)」と「若い子」しかいなかったから。

恵利:受け取るほうに「マチュア」の概念がなかったんだ。

美樹:そうだと思う。言葉が先行したけど、みんながピンと来なかった。「マチュアなキャリア女性」というものを、当時みんながまだ知らなかったんでしょうね。

菜穂子:働くに加えて、知性とか、美しさとか、意味がオーバーフロー気味だったのかな。でも20年たって、その概念が定着したわけだから、今なら言葉も定着する気がする。今こそまた「マチュア」っていう言葉を積極的に使いたいですね。

美樹:うん、「Beautiful 40’s(ビューティフルフォーティーズ)」としては「マチュア」押しで行きましょう!

菜穂子:美雪さんとも、それ話してたんですよ。「押したいよね」って。

恵利:言葉って、面白いですね。

菜穂子:ほんと。言葉が状態を作るよね。

美樹:「おばさん」も、辞書に載ってる「小母さん」の本来の意味、つまり「年上の女性を親しみを込めて呼ぶ言葉」というニュアンスがまた復活するといいなあって思いますね。美しい言葉として使われるようになるといいな。

菜穂子:今日からは、そういう意味で「おばさん」という言葉を捉えたいと思います。

 

おじさんは知的な
ダジャレ活動をしているのだ

菜穂子:若い人は、肉体が美しい、これは間違いない。でも人間力って、本来「総合力」だと思うんです。身体が美しい若い人だけが「良い」わけではない。

恵利:どういうこと?

菜穂子:例えばね、肉体力が衰えても、知力とか、精神力とか、包容力なんかが、反比例するように増えていくわけじゃないですか。その「上の年代の美しさ」って、あまり語られてないよねって思う。マチュアな女性の美しさ。もちろん男性も含めて。

美樹:最近すごく話題になった本『妻のトリセツ』の著者の黒川伊保子さんによると、「脳の最高潮期は、56歳から始まる」んだそう。だからまだまだ、我々は伸びしろがあるということよね。

恵利:それは嬉しい!

美樹:「若いことは、覚えるのに長けているけど、大人になった脳はいろんなものを組み合わせるのに長けている」という風に言われてますね。

恵利:それも実感としてある。

美樹:だから「知恵」が付いてくるのは、ある程度、大人になって以降。知恵はどんどん、死ぬまで発達し続けるものなんじゃないかって、私は思ってます。

恵利:かくありたい。

菜穂子:あの、大人の、特に男性に多い「おやじギャグ」ってあるじゃない?

美樹:「ダジャレ」ね。

菜穂子:そうそう。ダジャレって、脳の中で言葉をつなげる力が強いからできるらしいですね。若い子は、その言葉遊び、ダジャレがあまり言えないらしくて。大人になると脳のシナプスがいっぱい繋がるのか「全く違う言葉同士を組み合わせることができるから、ダジャレが増えるんだ」ってって聞いたことあります。

恵利:そうだったのか!

美樹:じゃあ、ダジャレを言うおじさま方は、脳の運動をしてると。

菜穂子:そそ、脳の活性化が行われてる。だからダジャレを言われたら「ああ、なんて知的なんだろう!」と言ってあげて。「知的な言葉ですね」「知性が炸裂してますね」って(笑)。

美樹:思えない(苦笑)。

恵利:喜んで、ますます言われちゃいそう〜。

菜穂子:私、自分が上手にダジャレを言えないから、ほんとのところ、すごく羨ましいです。

美樹:私もダジャレは難しくて言えない!

菜穂子:難しいですよ。いやあ、こういう、歳を重ねてからの面白さとか、いいよね。50代でまだまだ脳がピークなんて、ほんと、元気が出る話。

恵利:ものの見方が変わるね。

美樹:そういう情報、どんどん出していきたいですね。

 

「おばさん」の意味を
変えて行くのは私たち世代

菜穂子:今日の話は面白かったなあ。もう「おばさん」イコール「悪」っていう概念は、平成とともに葬(ほうむ)りたいですね。「令和」時代においては、あたらしい、良い「おばさんの意味」を広めていきたい。

美樹:それいいね。「おばさんは素敵だ」って、書いちゃおう。

菜穂子:「おばさんって言葉には、昔、悪い意味があったらしいよ〜」なんてね。ほら、言葉の意味って時代とともに変わるじゃない?

恵利:変わりますね。新しい元号とともに、気持ちもポジティブに行きたい!

美樹:新しく生まれて来る世代に対して、いろんな呼び方だったり、すてきな40、50代の生き方を提供したいよね。


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