2019年01月24日

【新連載】熊谷美雪の、マチュアな女性(ひと)と、コーヒーを vol.1


マチュア【mature】
[形動]1成熟したさま。円熟したさま。大人の。「マチュアな魅力をもつ女優」
    2(果物などが)熟したさま。(ぶどう酒やチーズなどが)熟したさま。
     -デジタル大辞典より

 

【新連載】
マチュアな女性(ひと)と、
コーヒーを

年齢や環境にとらわれることなく、自分らしい生き方、働き方を楽しんでいる大人の女性から、今、迷いの中にいる妹世代に送るメッセージコラム。

25年勤務した会社を47歳で退職し、独立。現在は「人生の質を高める働き方」を提唱する筆者、ビジネスステージアップコンサルタント 熊谷美雪がお話を伺います。

初回のゲストは、研修講師の篠田寛子さん。

20代でIT関連の仕事で独立するも、40代前半に介護を経験し一時的に業務を縮小。その後、45歳で人材育成の分野に特化しリスタート。2016年より厚労省委託の 「女性活躍推進アドバイザー」としても活躍中です。多忙ながらボタニカルアートの描画や、ご主人との乗馬も楽しんでいる篠田さん。

「枠を決めずに、はみ出して欲しい」と、可能性を諦めない大切さを語ってくれました。

 

親しみやすい笑顔がチャーミングな、研修講師 篠田寛子さん


美雪:私と寛子さんとは、同じコーチングスクールだったことがご縁の始まりです。今は具体的にどんなお仕事をされているのですか? 地方出張も多いようですね。

寛子:最近(私の仕事)は、個人の方向けに目標達成のためのコーチング、企業向けではコミュニケーション研修や、リーダー研修ですね。厚労省の女性活躍推進アドバイザーをしているため、企業から女性が活躍しやすい環境や制度づくりの相談を受けたり、女性活躍推進の研修の講師などもしています。

美雪:キャリアの最初からそういうお仕事をされていたんですか?

寛子:いえいえ、最初は違いましたね。私は起業してからは26年経っていまして。26歳で独立したころは仲間6人で古い一軒家をオフィスにして、IT関連の仕事をしていました。また、経営コンサルの会社のスタッフとして、経営塾の運営や研修を作る裏方もやっていたんですよ。その頃は、自分が表に出るとは思っていなかったですねえ。

 

2回目の起業・転機は義母の介護

美雪:今の仕事を始めたきっかけは?


寛子:私が39歳の時に、姑(しゅうとめ)が認知症で介護が必要になり、仕事は縮小して続けつつも、在宅介護を6年半やったんです。介護を終えて、また仕事に復帰しようと思った時に、45歳になっていました。これからは、本当にやりたいことだけにしたいなって思ったんですよね。

20代、30代はIT関連の仕事でしたけど、どんなに技術が進歩しても、それを使うのは人で、「大事なのは人だ」と思っていたので、「じゃあ、人材に関することを仕事にしよう」と絞りました。

最先端の技術を追うことにモチベーションを見いだす人もいるけど、私は年齢や 経験を重ねたことで「やっぱり人だよね」と思うようになっていました。

なので、第2創業みたいな感じですね。


美雪:私も47歳で独立しましたが、40代半ばからの第2創業はどうでしたか?


寛子:結果的に良かったと思っています。ずっとITをやっていたら、どこかで行き詰まっていたと思う。私は技術者ではなく、指示出しの役割でしたから、それってずっと自分がやりたいことなのかなあとも思っていて、ちょうど自分の仕事を見直すきっかけだったと思います。


美雪:年齢を経たからこそ、気づくことやできることが、ありますよね。


寛子: 収入とか売り上げというより、やりたいことだけやって行きたいと思うようになっていました。

 

自分の生活を優先するということ

美雪:介護は実際、どうでしたか。


寛子:舅(しゅうと)がなくなり、認知症だった姑を夫が急に引き取ることになって、一緒に住み出したんですけど、姑が元の家に帰ろうとして外に出ちゃう。

 しょうがなく、車に乗せて、毎日1日中、外に連れ出していたんですよ。仕事は夜やって。それを1ヶ月くらいやったかな。


美雪:えー、それはちょっと無理しすぎなんじゃ……。


寛子:完璧ではなくても、自分でやれる、やるべきとも思っていたんです。人に頼るのが苦手だったし。最初はネットで調べたりして、自力で全部やったんだけど、案の定、行き詰まってしまって。

毎日スーパーに買い物に行ったり、風呂屋さんに行ったり、いろいろ場所を変えて行くんだけど、自分の時間が取れないんだよね、全く。私もツライし、姑も喜んでいるわけじゃないし、これは無理だな、破綻するなということに気づいて、介護支援、ヘルパーさんやディサービス、ショートステイお願いしたんですよ。


美雪:プロや周りのサポートがないとキツイですよね。


寛子:そう、その心境に至るまでがつらかったかな。いずれはあると思っていたけど、いざやってみたら、「自分ひとりではできない」ということに直面して。

最初は探り探りで、仕事があるときだけショートステイをお願いしていましたけど、そのうち自分の時間を作るために、仕事以外の時もお願いするようになりました。

篠田寛子さんの趣味は40代で始めたボタニカルアート

 

介護を人に依頼したら、自分の時間が増えた!

寛子:今、女性活躍推進の仕事をしていて思うのは「介護をしている人たちは、頑張りすぎないで欲しい」ということ。私は、やりすぎてしまったから。先が見えないことだからこそ、自分の生活を優先しながらどう両立していくかを考えることが大事だと感じます。その反省を今、いろんな人に話したりしています(笑)。

ただ、良かったこともあったんですよ。


美雪:というと?


寛子:介護の間、仕事をセーブして地元にいることが多かったんです。これまで仕事だけで来たから、デイサービスやヘルパーさんにお願いしている間、この機会に習い事でもしようと思って、ボタニカルアートの教室、パン教室、夫婦で乗馬教室にも行き始めました。

仕事ばかりしている時はこんな時間はなかったので、介護がきっかけで趣味の時間を持つことができたんですよね。

特に、ボタニカルアートは地元の公民館でやっていて、来ている人はみんな年上だったので介護の話を聞けたし、病院の評判や近所の美味しいお店を教えてくれたり。そんな雑談がすごく役に立った。仕事をしているときは、地元のそういう情報に疎かったので。

美雪:都心で仕事をしていると地元は帰って寝るだけになりますよね。私もそうです。私の周りにもそういう女性は多いです。


寛子:あと、規則正しい生活も余儀なくされたし。食事の栄養管理とかね(笑)


美雪:ある意味、人間らしい生活ですよね(笑)

 


仕事のやりがいって、どこにありますか?

美雪:やりたいことだけに絞った第2創業も、すごくいい感じで来ていらっしゃるようですが、今のお仕事のやりがいって何ですか?

寛子:研修も、コーチングも、相手が良くなっていったり、能力を発揮してもらうことの支援なんです。相手の方に「悩んでいたけど、たいしたことないと思えた」「仕事をやりたくないと思っていたけど、頑張れる元気が出た」「更にもっとできそうと思えた」というような、ちょっとした言葉をもらうと、やって良かったと思えますね。それだけで十分です。


美雪:「仕事、楽しい!」って思えるのも、そんな時かもしれませんねえ。


寛子:先日、岐阜県の美濃加茂市で、一般の方向けのアサーションの講座に登壇したんですね。「アサーション」とは、話す側・聞く側がお互いを尊重しつつ、率直に自己表現するコミュニケーションスキルのひとつ。参加者は、地元の企業の女性会社員や、主婦など、いろいろです。

ご受講後に、参加した皆さんが「大げさなことではないけど、日常にはないことを学べた」「日頃、仕事や家事をやっていても誰も褒めてくれないけど、ワークの中で、自分のことを褒めたら、私これでいいんだ!と思えた」「認めてもらえた気がして嬉しい」と、おっしゃっていて。

講座中に、人の顔が輝く瞬間があるんですよね、パーッと。最初、部屋に入ってきたときは、なんだかどんよりしていたのに、途中でパッと顔が変わる、その瞬間を見るのが嬉しいです。「どんな人も可能性がある!」と思えてくるんですよね。

美雪:ありますよね。パーッと顔が輝く瞬間。「心が動いた瞬間なんだ」と、講師の側からも一目でわかる。


寛子:人生を難しく考えている人や、頑張りすぎている人が多いので、一般の方向けには「もっとラクに生きて行ける」と思えるような講座をします。すると肩の力が抜けた、と言ってくれて。顔が変わるんですよね。

 

働き方も、生き方も、人それぞれ

美雪:これから、やってみたいことはありますか?


寛子:中小企業や地方の良さを活かして、女性の働き方をもっと柔軟にして行けたらと思っています。


美雪:というと?


寛子:中小企業の方々と関わってきて気づいたのは、中小企業の方が女性が仕事を任せてもらえる範囲が広かったり、経営者に直接意見を言える機会に恵まれていたり、女性社員一人ひとりに合わせて制度をすぐに整えてくれるなど、実は女性が活躍しやすい場面が多いことでした。

例えば、子育てと仕事を両立中のテレワークや子連れ出勤なども、今のように話題になる前から、「社員の都合に合わせてやっていますよ」とこともなげに言う企業も結構あったり。でも、その利点に対する認識が企業も女性たちもまだまだ薄くて、大企業志向や都会志向が、いまだに根強いんです。これが本当にもったいなと。


美雪:なるほど。 


寛子:中小企業や地方の女性たちで、自信がない、自分なんか大したことないと思っている方々に、実は結構がんばれているよ、もっとやってみようよと伝えたい。そして、自分はこの生き方を自ら選択したと堂々と思ってもらえるよう、大企業や都心で働くことにこだわらず、地元密着でも、自分の力を発揮できる柔軟な女性の生き方を支援したいですね。

地方ならではの、なんかかっこいい!と思える、キャリアプランの構築は、できると思うんです。


美雪:私のお客様でも東京都内から地方に移って、空気の綺麗な環境で子育てしながら教育関連の事業を立ち上げて、地元のかたや自治体と協力しながら活動している方がいます。


寛子:素敵ですね。今はITも進化しているから、海外でもどこにいても、できることがあるはずなんです。

 

あきらめるのは、もったいない

美雪:「人としてマチュアかどうか」というのが本連載のテーマなのですけど、日本人は年齢を気にしすぎると言われていますよね。個としてどうかより、人と同じであることに安心する。働き方や幸せの価値観も、いつの間にか周りの人が基準になっていたり。

今、30代くらいの方だと仕事の責任も増えるし、結婚、出産と求められることが多いから、大変だとは思うんだけど、自分の価値観を見失わないでいられるといいですよね。


寛子:そうですね。例えば、30代はこんな感じ、収入はこのくらいで、家族は……と、「周りの平均」に比べて幸せかどうかを決めてしまう。そこから外れることを、異常に怖がってしまうのは残念だなあ。

できないことは勉強したり、手伝ってもらえばいいし、失敗したらやり直せばいいんですけどね。これは何も起業ばかりの話ではなくて、会社員であってもね。

とは言っても、自分もその世代の時はそうだったからね。


美雪:そうそう、私もそうでした。22歳の時、25歳の先輩が彼氏と別れたのを見て「25歳で別れるなんて、気の毒……」なんて思っていたから(笑)。


寛子:今から考えたら、笑っちゃうね。学歴も関係ないと思うけど、その時は必死だしね。


美雪:ですね。では、今、自分の人生やキャリアに迷っている人にメッセージをもらえますか?


寛子:型にはまらないこと、自分の可能性、世界を決め付けないこと。選択肢は、昔に比べて、女性であってもどんどん広がっていて、その分、悩むかもしれないけど、横の人を見て「私ってこのくらいか」とか「遜色ないからこの程度でいいか」と思ってしまうのはつまらない。

新しいことに挑戦すると、失敗するかもしれないリスクはあるけど、挑戦してみないと、できるかどうかもわからないからね。

会社員のままでも、家と会社の往復ではなく外の人脈やコミュティを持つとか。ちょっと踏み出すと、世の中には想像もつかないいろんなことが待っている。地方にいてもネットでも参加できるし。枠を決めずに、はみ出していいんだよ、と伝えたいです。


美雪:あまり先を計算しすぎなくていいですよね。寿命は伸びても、動けるのは体力があるうちだしね。早いうちに動いた方がいいですね。

寛子:そうそう、ちょっとやってみてダメだったら、変えてみるとか、それも面白いよって。この先ずっと生きていく上で、その時々どう過ごすのか?と考えるときも、それまでにいろんな経験をしていれば、たくさんある選択肢のなかから、充実した過ごし方を選べるはず。いろんなことに首を突っ込んでみるといいです。

忙しくても、趣味や関心があることをやってみることで、エネルギーも湧いてくるし。


美雪: シンプルに言うと、やらない後悔よりやった後悔の方がいいということですね!


寛子:そう。あと、挑戦している人って純粋にかっこいいですよね。例えば私のボタニカルアートの先生は、44歳頃にご主人の仕事でアメリカに帯同した際にボタニカルアートを学んで、80歳を過ぎてもなお、精力的に日本で教えている。挑戦し続けている人です。さらには姿勢もキレイ、いつもイヤリングと香水をつけて凛(りん)として、細かな絵の線をキレイに描いて教えてくれる。

ご主人は引退して自宅にいるので、家事もやってから教室に来ているのだけど「あんなふうになりたい」と思わせてくれる女性なんです。


美雪:そういう人たちに私たちが勇気付けられているように、私たちが後に続く人たちに選択肢を見せてあげたいなあ。


寛子:私は30代で面白い経験ができて自信がついた。そんな30代があったからこそ40代で第2創業ができたと思っています。今思えばですが、30代にどれだけ一生懸命生きたかが、その先の人生に大きく関わっていたのですね。


美雪:今、悩みながらも一生懸命やっていることは、必ずその先につながると信じていいんだよ、と伝えたいですね。

 

篠田 寛子さん Hiroko Shinoda
有限会社クレオ代表 http://www.creo-coach.com/

愛知県出身、岐阜県在住。
大阪外国語大学(現大阪大学)外国語学部イスパニア語学科卒業。食品会社、人事コンサルティング会社を経て26歳で独立。人材採用企画、経営者勉強会、管理職研修などの企画・運営に関わる。近年は「人の可能性はもっとある」をモットーに経営者コーチング、ダイバーシティや女性活躍推進プロジェクトを主に行っている。主な活動内容は、企業研修、経営者サポート。各種勉強会・セミナー開催、講演。2016年からは、厚労省委託の女性活躍推進アドバイザーも務める。
夫と、ノーフォークテリアの「アン」、保護猫の「リリ」と暮らす。

主宰サイト:
WinBE(Woman in Bunsiness Empowerment Team)http://wollab.jp/

 

インタビュアー
熊谷 美雪 Miyuki Kumagai
ビジネスステージアップコンサルタント

「サービスや人の価値を響く言葉で表現すること」「アイディアを商品化すること」「仕事の仕組み化」を得意とする。
独立前は外資系企業に25年勤務。プロジェクトコーディネーター・管理職として多忙な日々を過ごすも、40代に入りあまりの多忙さに身も心も疲弊。「このまま年を重ね、後悔したくない」との思いにかられ、47歳で独立。
全ての女性に、一度きりの人生を濃く感動して過ごして欲しいと、人生の質を上げる働き方を実現してもらうべく、日々コンサルティングに励む。
推理小説とカフェ、宮古島でボーっとするのが好き。
ネクストステージラボ 代表 
NPO法人 しごとのみらい 理事

Instagram:
@Miyuki_Kumagai_

公式サイト:
週4ワークで人生の質を高める働きかた
https://kumagaimiyuki.com


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