2018年12月10日

女性が定年を迎えるとき |2018年12月の座談会

女性が定年を迎えるとき|2018年12月の座談会

東京で、強く、美しく、賢く働く40代のためのメディア「Beautiful 40’s(ビューティフルフォーティーズ)」。メンバー3人が、40代周辺のできごとについて語り合う座談会。2018年12月のテーマは、女性の「定年」。会社員の誰もが向き合うべき、軽やかな「定年」の迎え方とは? 

【左上】ディレクター 及川恵利 >twitter 
【下】編集長 池田美樹 >twitter
【右】プロデューサー 守山菜穂子 >twitter

 

年末になると、気になること…
それは「定年」の迎え方

美樹:今年、最後の、12月の座談会を始めたいと思います。みなさん、12月はどんな感じ?

菜穂子:「年末進行」……!

恵利:年末進行。絶賛、来てる。

美樹:私は大学院の論文の追い込みで、絶賛、激太り中です。

恵利:そっち!

美樹:ご飯が美味しくて、美味しくて。脳からどんどん糖分が奪われていくので、食べてばっかり。そっちに逃げてるんです。さて、今日は恵利さんがお話したいことがあるそうで。

恵利:ここ数年、年度末になると考えることがありまして……。この3人の中で、私だけが会社員なんですよね。社会人歴もけっこう長いので、そろそろ「先」というものが見えてきてます。「定年」というものがあります。「果たして定年後、私はどうやって生きていくのだろう」と最近、特に考えるんですね。

でも、仕事をしない生活なんて考えられないし。実際問題、収入どうしようとか。そう考えたら、たぶん私の数年上の先輩は、もっと切実なんだろうと思う。誰もが経営者だったりしないし、ふんだんにお金を持ってるわけじゃない。特にシングルの場合、子どもがいない人などは、果たして今後どうして行ったらいいんだろう? って、すごく不安に思うんです。

実はまだ、私自身は、明快な解答も、「こうしたらいいんじゃないか」っていうプランも持ってないんです。みんなどう思っているのかなって。

菜穂子:男女雇用均等法の施行後に社会人になった女性たちが、今、50代半ばなんですよね。いわゆる「バリキャリ」の最初の世代。もちろんそれより前に働いてた女性たちもいたけど、数がグッと増えたんですね。今の50代半ばより後は、働いている女性の数がすごく多いし、また業務の制限なく働くのが当たり前になった時代です。その人たちがあと5年ぐらいで、一気に定年していくという。これは社会問題になると思います。

美樹:社会が変わりつつありますね。そういう時代を生きた人たちが、まだいないよね。ロールモデルが。

恵利:今の若い子って、先を見越して、わりと技術を身につけたりしてますよね。発信力もあったりして。でも、そもそもパソコンや携帯がなかった頃に青春時代を過ごした、先輩と我々なので。どうしたらいいのかと。「副業」なんて言葉もなかったように思うし。

菜穂子:私たちが社会人になった頃はまだ、「勤め上げる」っていう概念が普通に目の前にありましたよね。

美樹:あとやっぱり、「結婚退職が当たり前」だったよね。つい、この間ぐらいまで。

菜穂子:今、50代の人たちが20代の頃はそうでしたよね。短大卒、結婚退職っていうコースは花形だった。

恵利:そんな中、私のように「シングルで、ずっと仕事してきました」という人たちも絶対たくさんいるので。未婚・離婚も含め、50代半ば以下で、人数がグッと増えいるんですよね。その人たちは、定年したらどうするんだろうって。

菜穂子:50代の先輩方、みんなすごく元気だし、綺麗だし、知性もあるし。その人たちが「定年して隠居する」とか、まったくイメージできないなあ。だから、まあこれからも働くとか、ボランティアするとか、社会に対してイキイキと関わり続けてくれるんじゃないの?っていう気がしますけどね。

美樹:定年退職した人や、一度、主婦となって社会を退いた人に、労働力として活躍してもらおうっていう意見もありますよね。

菜穂子:ありますね。国の政策ですよね。

恵利:その働ける「場」と、「人」マッチングじゃ、今後、とても必要になってくるような気がします。

美樹:「実際にマッチングできてる」っていう話は、まだあんまり聞こえてこないね。

恵利:みんなそれぞれ「どうしよう」って考えて、貯蓄するなり、資格を取るなり、何か技術を身につけるようなことを個々にやってるだけのような気がするんですよね。

菜穂子:確かに……まだ、大きい「うねり」にはなってないですね。気づいてる人は、ちょっと先行して勉強し始めてるという感じかもしれません。

 

迷える50代が、たくさんいる? 

菜穂子:私は38歳のときに会社を辞めて独立起業したので、定年はなく、まさにこのウェブサイトのタグにあるとおり「90歳まで働きたい」みたいな状態です。だから43歳の現在、「定年の不安」っていうのは、私自身はないです。今の仕事を、きっと、あと30年か40年やるだろうなって思ってます。どうにか工夫して、長く元気に働きたい。

ただ、30代後半の、独立前の時には、こんな風に考えていました。「このまま自分が会社員として勤めると、私たちの時代は60歳では年金がもらえないので、きっと75歳ぐらいまで、年金待ちで、会社員をすることになる。そこまであと40年近く、このまま会社員をするか? いやいや、30代のうちに独立するか?」

そこで、私は「50代になってから独立するのは大変かもしれないし、ちょっと自信がないな」、「60歳になってからどうせ独立するなら、なるべく元気なうち、今のうちにやるか」と思って、そちらを取ったんです。ここが分かれ目でした。

恵利:パーソナルブランディングにも、定年間近の人って来ますか?

菜穂子:来ますね。私が講師をしているパーソナルブランディングのセミナーに、50代の方はすごくたくさんいらっしゃいます。個別相談のコンサルにお越しになるかたも多いです。

内容は「会社員だけど、50代のうちに起業したい」っていう人もいるし、「一度は主婦として働き方を緩めていたけど、子どもの手も離れたし、また本格的に働きたい」っていう女性も多いですね。「50代からもう一度気合い入れて、もっともっと上を目指したい」という方もいます。日々いろいろなパターンのご相談に乗ってますね。

美樹:迷える年齢ではあるってことですね。

菜穂子:そうかもしれません。50代の共通点としては、全体的にネットにあまり強くないので、ネットだけで集客したり、SNSをうまく活用して日々発信するのは、やや苦手かもしれないですね。若い子のようにスイスイと使いこなせてはいない。

もしくは、かなり勉強して頑張っているか。「それをやっておかないと見つけてもらえない、お客さんが集められない」っていうことで、ネットに必死で向き合っている気がします。

美樹:なるほどね〜。

菜穂子: 20代の子たちの、インスタとかブログの使い方を見てると、もう空気のように、水道をひねれば水が出てくるがごとく、SNSを使ってるじゃないですか。ストーリー、Tik Tok、あらゆる動画。

でも50代はそうはいかないので、けっこう苦労してるな、っていう印象がありますね。もちろん、個々によりますけどね。上手い人もいますけど。

ちなみに20代と50代で、30歳の年齢差があるでしょ。では「バブルを謳歌した50代」の30歳上は?というと、戦中・戦前生まれの昭和一ケタ世代なんですよ。バブルと、昭和一ケタでは、消費に対する感覚が全く違う。

だから同様に、50代と20代のネットに対する感覚は、だいぶ違いますよってお話ししてます。20代とネットで対等に戦うのは無理です。ネットに関しては20代に教わるのが一番いいと思います。私も含めて。

美樹:そういう意味で考えると、「定年する人たちで、デジタルネイティブじゃない人たち」って、今から定年する10~20年で終わってしまうわけじゃないですか。私たちって、なんだかすごく、レアな世代なのかもしれないね。

菜穂子:デジタルネイティブは、全体の印象として「何かに囲われてる感」が少ないなって思いますね。個々で発信も当然できるし、就職活動・転職活動もネットでスイスイとつながって行くし。

それが若いときになかった人たちは、たとえば「会社員だから個人の発信はあんまりしちゃいけない」って思い込んでいたり。そういう人も多い印象ですかね、まあ、総論だけど。一人一人は違うんだけど、世代のイメージとして、です。

美樹:先に行く人たちがいなくて、自分たちがそういうことにぶつかる初めての世代っていう、戸惑いみたいなのがあるんでしょうかね。

恵利:デジタル系を使いこなす・使いこなせないの話でいうと、定年世代も、もし何かやりたいことがあれば、いくらでも発信ができる時代だから、それで頑張れるのはいいよね。でも「定年後もやりたいことがない」という人の方が問題だと思っていて。ずっと毎日、会社に行くっていう「往復の生活」に、何の疑問も持っていなかった人のほうが重症だと思うんですよね。

 

「定年後」のイメージって、
どんな感じ?

美樹:「定年の先をうまく生き抜いていった人」のロールモデルっているかなあ。

菜穂子:うーん、思いつかないですね。瀬戸内寂聴さんみたいなずっと上の世代になっちゃうな。「元気な高齢者のロールモデル」は多いですけどね。

恵利:名もなき人たちが、いっぱいいるはずなんですけどね。幸せの形って、人それぞれだから。

菜穂子:今の70代ぐらいの人が60歳で定年した頃は、「定年したら家庭菜園をやって」とか、そういうことを言っていた印象があります。前の会社の先輩でもいたけど「夫婦2人で山小屋を買ったので、山のほうに移住します」とか。あとは「犬と戯れてのんびり習い事をしてます」とか、軽い隠居のイメージが、まだけっこうあるんですけど。

美樹:「隠居」できたのは、年功序列で、夫の蓄えが豊かだったからですよね。年功序列で、たっぷり退職金をもらって、たっぷり年金をもらえて。そういう世代までは「隠居」が第1の選択肢だったってことですよ。

菜穂子:なるほどなあ。当時は結婚率も高いですしね。

美樹:日本って1990年くらいまで、100%近くの人が結婚していたんですよ。今の60代以上が若い頃は「結婚するのが普通」だったんです。

菜穂子:死別とか、何かの理由での離別以外は、まずは1度は結婚するのが普通だったんですね。

恵利:今は、生涯未婚率、すごく高いでしょ。

美樹:高いですよ。2035年には、女性のうち5人に1人、男性のうちに4人に1人が生涯未婚となります。「独身バリキャリ50代」っていう世代が、今、日本の歴史で初めて誕生しているんですね。

菜穂子:ロールモデルがまだ見つけられないのも頷けます。しかし、今の50代の人たち、どう考えても絶対「隠居」しないですよね(笑)。華やかで、刺激的なことが大好きで、目が肥えている、バブル世代ですしね。

美樹:ちなみに、昔の研究論文を読むと、働いている女性の代表的な職業は、教師か看護師なんですよ。有職女性の研究は、看護師か教師を選んでいるケースが多い。確かに、昔はその職業しかずっと続けられる仕事がなかったんだろうなと感じます。今は女性の働き方のバリエーションも増えましたね。

 

50代の「学び直し」ブームが
やってくる!
 

美樹:私は昨年、50歳で大学院に入り、学び始めたんです。その理由はやっぱり「このまま定年して、定年のときにハッと思いついても、それからだとちょっと遅いぞ」と思ったことでした。でも10年前から何か助走を始めていれば、定年のときにはもうヒューッて飛び立って行けるんじゃないかな?と思って。準備のために大学院に行き始めたんです。

菜穂子:美樹さんは、最初はすぐ会社を辞めるつもりはなかったものね。でも結局、大学院で勉強し始めて数ヶ月後に、会社を辞めてしまいましたね。何かに気づいたの?

美樹:勉強し始めたら、勉強も面白いし。あとは「自分は世の中のいろんなものをいっぱい見てきたつもだったけど、まだまだ、知らない世界が大きく広がってるんだな」っていうことに、大学院で改めて気がついたんですよ。そしたら、なんかね、 会社のなかで、グルグルもがいてるよりは、もう「バン!と飛び出しちゃえ!」と思って。自分で、大海にぼちゃーんと飛び出した感じ。

私はまだ大学院を卒業してないので、先が見えてるか?って言ったら、見えてはいないんですけど。まあ少なくとも、会社にいるよりは希望の持てる日々かな、と今は思ってますね。

菜穂子:これから50代女性の「学び直しブーム」とか、プチ起業、副業のブームが一気に来るかもしれないですね。その市場が、まだあまりない気がする。マーケッターとしては、そこはアリだな、ビジネスチャンスだなとすごく思います。

恵利:来る、来る。メディア人としても感じる。

美樹:政府も「リカレント教育」っていう表現で、学び直しを推進してますし。

かといって、「じゃあ、どう学びなおせばいいの?」っていう情報はまだ少ないですね。「学び直したい」っていう話はよく聞くけど、「大学院とか行ってみたら」なんて言うと「ええ! そんな、敷居が高い」って言われちゃう。

実は、どこの大学院も無料の講座をいっぱいやっているし、そういうのを聞きに行くだけでもいいんですけどね。無料の講座ってね、大学院の授業をときどき開放しているんですよ。だから、私たちにとっては本来の授業なんだけど、たまには一般の人にも聞いていただけるような組み立てにして、開いているんです。どこの大学院も、調べれば、たくさん講座があるの。

いきなり入学するのは確かに敷居が高いと思うけど、無料の大学院の講座に行くのはお勧めしたいですね。なんか、変なセミナーとかに高額を払うよりは(笑)

菜穂子:セミナー講師としては戦いたいところだけど(笑)。いいセミナーもたくさんあるのよ!

恵利:大学院って、会社の近く、家の近くにも結構あるんですよね。土日も、夜もやっていますしね。

美樹:私が通う慶應義塾大学の大学院システムデザインマネジメント研究科でも、ちょうど私がティーチングアシスタントを務める授業の公開講座がもうすぐあります。こういうことって、まだあまり、知られていないんだな。すごく良いので、活用して欲しいと思いますね。

菜穂子:私、43歳になった昨年から「日本マーケティング学会」に入会したんです。今まで学問を極める方向の経験が全くなかったので、これは初めてトライしていることなんですけど。学会って、ぶっちゃけ実は、お金を払えば誰でも入れるんですよね。「自分が何か、好きなジャンルがあるなら、学会を見つけて、この歳でも入っていいんだ」ってことに気づいたんです。

学会は、大学院生とか研究者だけが入れるものだと、思い込んでました。普通の大人なら、誰でも入れるんだって初めて知ったの。

それで、大学の先生や、研究者レベルのスペシャル授業を定期的に受講できたり、文献が読めたり。学会DAYは、朝から晩までマーケティングの新しい考え方の発表を、浴びるようにざぶざぶ、たくさん聞いて。正直すごく面白かった。勉強になったし、刺激的な知見を得られたし、上には上がいるということもよくわかりました。

美樹:知らない世界って、まだまだ、いっぱい広がってるよね〜。「探す努力」を始めてみるのはいいですね。「自分の持っている素材」が少ないから迷うのであって、「素材」をたくさん、過去からも現在からも見つければ、自分の将来を組み立て直せるじゃないですか。

「なんか、袋小路に入っちゃった……」「定年になっちゃう、どうしよう、どうしよう……」って思っているなら、1回、肩の力を抜いて、周りを見渡して、自分自身のことを見直すっていうのはおすすめ。

菜穂子:「自分を組み立てる材料を増やす」っていうのは、すごくいいなあって思いました。

美樹:私自身もそうしているし、私が今、取り組んでる論文がまさに、そういう内容なんです。

 

定年後に向けてのヒントを、
少しずつ集めよう

菜穂子:恵利さん、今回の座談会で、ちょっとは気が軽くなりました? 定年後に向けてのヒントが得られましたか?

恵利:うーん、まだ正直、わからないです……。もやもや……。

菜穂子:そっかあ……。会社員をやってると、毎日、会社行くことでいっぱいになっちゃうから、「自分自身の未来」を、立ち止まって考える時間はすごく少ないですよね。

美樹:一度、立ち止まってゆっくり考える、意図的にそういう時間を作ってみるっていうのがいいよ。

恵利:確かに。12月っぽい取り組み。年末年始に、そういう時間を作ってみるのはすごくいいね。

美樹:これから増えるであろう「定年女子」の悩みについて、「Beautiful 40’s(ビューティフルフォーティーズ)」編集部では、引き続き全力で向き合います。

菜穂子:定期的に市況ウォッチしたいですね。

美樹:私も研究の上で、定年女子への回答みたいなものを見つけて行きたいと思ってます。一緒に、考えて行きましょう。  ご意見や、実例もお寄せいただけると嬉しいです。

 

Photo/鈴木智哉(キリンニジイロ)、守山菜穂子


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